7 各論2:脈・血圧(血管):高血圧・低血圧(3)輸液(2)
等張液輸液は、細胞の中に無理やり入り込むものでも
細胞の水を奪うものでもありません。
とても便利ですが…エネルギーのもと(糖質)も欲しいですね。
そこで生まれたのが低張(電解質)輸液。
ブドウ糖(グルコース)が入った輸液で、
最初は輸液全体がヒト細胞と等張液になるように作ってあります。
グルコースは代謝されると、水と二酸化炭素とATPになりますね。
最終的はグルコースの粒が減って水が増えますから、
低調(浸透圧が低くなる:薄くなる)液になります。
個別の目的に合わせて作られた1号液から4号液が使われます。
「まず水の補給!どこが悪いかはその後で!」
こんなときに使うのが1号液。
ナトリウムイオン(Na⁺)と塩化物イオン(Cl⁻)の濃さは薄めで、
カリウムイオン(K⁺)を含みません。
電解質(イオン)はいじらずに、水分補給で落ち着いてくれればオーケー。
もしだめなら、ちゃんと原因を探してから次の輸液にうつります。
「脱水だ!」と分かったときに使うのが2号液(「脱水補給液」)。
ナトリウムイオンと塩化物イオン、カリウムイオンに加えて
マグネシウムイオンや乳酸イオン等も含みます。
細胞内液補給に重点を置いた輸液ですね。
「脱水」と簡単に言いましたが、脱水にも種類があります。
炎天下や食事をとれない体調不良のように、
じわじわと水分がなくなった脱水は
細胞外(血液・組織液)だけでなく細胞内水分も足りません。
そんなときに細胞内に水分を届けるときに使うのが、2号液になります。
2号液で水・電解質不足が落ち着いたあとに使うのが3号液(「維持液」)。
こちらは2リットルあたりに1日必要量相当の
ナトリウムイオンと塩化物イオン、カリウムイオンを含んだもの。
お目にかかる機会が一番多い輸液です。
水分の体へのイン・アウトのおはなしは、
生化学でミネラルの前提としておはなししてあります。
とりあえず「飲料水と食物中の水」の部分が
この3号液2リットルに置き換わったと思ってくださいね。
手術をすると、たいてい水分が足りなくなります。
普段水分や熱が逃げないように覆ってくれる皮膚を切って、
出血のある手術をする以上、どんなに注意しても仕方のないことです。
だから、手術後の水分回復に使うのが4号液(「術後回復液」)です。
こちらは細胞外液が足りなくなる急な脱水です。
似た状況には嘔吐や下痢も当てはまりますね。
成分はナトリウムイオンと塩化物イオン、ブドウ糖(グルコース)と乳酸イオンで、
カリウムイオンは入っていませんよ。
このように分かれてはいますが…主に使われるのは1号液と3号液です。
目的とする状況の違いは分かってもらえたと思いますが、
「1号液にはカリウムイオンが入っていない」ことはポイントですからね。