2 性感染症(STD)のおはなし(10)
今まではTORCHのおはなしをしてきましたが、
TORCHだけが性感染症ではありません。
トリコモナス原虫のおはなしをしましょう。
「原虫」とあるように、
トリコモナスは細菌でもウイルスでもありません。
もっと大きな、「虫」に近い存在です。
他に有名な原虫といえば「マラリア原虫」がいますね。
それなりに大きく、
細胞内に入りこむのではなく粘膜表面にしがみついています。
トリコモナス原虫にとっては、
尿道は尿の勢いが強すぎて暮らしにくい場所。
膣は分泌液の流れが弱く、暮らしやすい場所になります。
だから女性の膣内で繁殖し、
「トリコモナス膣炎」を引き起こすのです。
トリコモナス膣炎になると、
おりもの(帯下)が泡立ち、異臭がします。
性交時以外にも違和感やかゆみが出てきますよ。
場所が近いので、尿道にも感染することがあります。
そのときには尿道炎を起こして排尿痛が出てきます。
男性も感染しますが、男性では無症状が多いですね。
原虫がしがみついたところで、
大部分は尿で流されてしまうためでしょう。
ただ、無症状ゆえに
パートナーとの間でうつし合うこともあります(ピンポン感染)。
治療は、可能な限りパートナーと一緒に行う必要がありますよ。
トリコモナス膣炎・尿道炎自体は
胎児に悪影響を及ぼすものではありません。
でも、女性では腹腔内に感染が進むと
不妊症を引き起こす可能性があります。
いざ子供が欲しいと思ったときには、
「妊娠できない(もしくはすごく妊娠しにくい)状態になっていた!」
なんてことにならないように!
今、感染しているならしっかりと治療を受けましょう。
出された薬を、正しく使うことです。
不快な症状がなくなったからといって、
途中でやめてはいけませんからね。
予防方法としては、毎度おなじみコンドームですね。
性行為以外にも感染可能性はありますが、
日本で通常の日常生活環境下なら、
せいぜい家族内のバスタオル共用に気を付けるくらいです。
あとは母子感染(出産時経腟)の可能性もありますが、
感染さえ分かっていれば帝王切開で対応できますね。
他にも性感染症のおはなしは続きますが…次回は1回おやすみ。
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