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2 皮膚(3)皮膚に必要なもの

ここで確認。

なぜセッケンを使うと油汚れが落ちるのか。

「セッケン」と一言でまとめていますが、

その基本は「脂肪酸のナトリウム塩」です。

 

多分生化学で勉強したと思いますが、念のために復習。

油(油脂・脂質)はいろいろな種類に分けられますが、

その基本構造の1つが脂肪酸。

水になじみにくい(疎水性)炭素と

水素でできた鎖(炭化水素鎖・炭素水素鎖)の

「ベルトの革」部分と、

水になじみやすい(親水性:カルボキシル基)部分の

「ベルトの金具」が組み合わさった

「ベルト」の形が脂肪酸です。

脂肪酸のベルトの金具部分にナトリウムがくっついたものが

「脂肪酸のナトリウム塩」です。

 

では、どうして脂肪酸ナトリウム塩は

油汚れを落とすことができるのか。

脂肪酸ナトリウム塩の脂肪酸部分(ベルトの革)は水嫌い(疎水性)。

汚れの油も水嫌い。

「水嫌いどうし、仲良くしよーねー」と手をつなぐことができます。

 

たくさんの脂肪酸ナトリウム塩と手をつないでいくと、

汚れとしてくっついていた油が、

くっついていたところから離れてしまいます。

汚れの油の周りを、脂肪酸ナトリウム塩でぐるりと囲んだ状態です。

この状態を「ミセル」と呼びます。

 

脂肪酸ナトリウム塩は、脂肪酸部分を内側に、

ナトリウム部分を外に向けていること分かりますか?

ナトリウムは血液中ミネラルの主成分でもある、

水と仲良し(水になじみやすい:親水性)成分。

ミセルの状態で水が流れてくると、

水の流れと一緒にミセルも流れていってしまいます。

これが「セッケンで洗って、流すと汚れが落ちた!」状態。

セッケンで洗うと油汚れが落ちる理由、分かりましたね。

 

そしてこのとき、
水の中にマグネシウムイオン(Mg²+)や

カルシウムイオン(Ca²+)があると

油汚れとくっつくはずだった脂肪酸ナトリウムと

いち早く手をつないでしまいます。

これらのイオンと手をつないでしまうと、

もう油汚れ落としには参加できず、

白い塊(白沈)になるだけです。

「海外でセッケンを使ったら、

汚れが落ちない!(必要な分まで手をつながれた)

白いセッケンかすも(白沈ができた)!」

これは水の中にマグネシウムイオンやカルシウムイオンが多い

硬水を使ったからですね。

日本の水はマグネシウムイオンやカルシウムイオンの

少ない軟水ですよ。