3 気体と三相(4):肺と酸素ボンベの基礎
気体の圧力のおはなしは、肺の空気交換に関係するおはなしです。
まず、肺というのは私たちの体の中で
酸素と二酸化炭素を交換しているところ。
「なぜ酸素を体の中に取り入れる必要があるのか」
「どうして二酸化炭素を体の外に出す必要があるのか」
これらについては、他の科目で勉強できるはず。
ここでは「酸素を吸って、二酸化炭素を吐くことが生きるために必要!」
それが分かってくれればオーケーです。
では、なぜ肺は酸素と二酸化炭素を交換できるのか。
それは分圧による「ぎゅうぎゅう、すかすか」のおかげです。
分圧という言葉は、前回出てきましたね。
酸素の粒や、二酸化炭素の粒による圧力のことです。
同じ温度で分圧が高いということは、
粒が多くて「ぎゅうぎゅう」の状態。
同じ温度で分圧が低いということは、
粒が少なくて「すかすか」の状態です。
具体例として、電車の中を考えてみましょう。
皆さんが電車に乗ったとき、なぜかその車両だけ満員(ぎゅうぎゅう)だったとします。
乗り換えに支障がないなら、
空いている(すかすか)の車両に移りたくなりますね。
粒も、同じです。
動ける状態にあるのなら、
ぎゅうぎゅう(分圧高い)からすかすか(分圧低い)に動きます。
肺の中にある空気と、肺を通る血液の間は「動ける状態」にあります。
そして肺を通る(肺に入ってきた)血液では、
酸素分圧は空気より低く、二酸化炭素分圧は空気より高くなっています。
「ぎゅうぎゅうからすかすか」に従うと…
酸素は空気から血液に動き、
二酸化炭素は血液から空気へと動きますね。
これが肺における酸素と二酸化炭素の交換です。
このおはなしが分かると「酸素乖離曲線」も分かりますよ。
酸素解離曲線というのは、
血液中の酸素運搬担当の赤血球が
「どのくらいの酸素分圧のところで酸素を手放すか」を示しています。
まず、肺から身体の中に入ってきた酸素は
赤血球と「ゆるーく」手をつなぎます。
全部の赤血球が酸素と手をつなぐわけではありませんが、
ほぼ全員(約99%)が手をつなぐんだ…と思ってください。
「ゆるーく」がとても大事です。
「酸素とくっつけないと酸素を運べない」ことは、すぐ分かりますね。
でも「酸素と手を離せないほどくっついた」だったら、
全身の細胞へ酸素を「届ける」ことはできませんよ。
赤血球は、血液が全身をめぐる途中で
少しずつ周囲の細胞に酸素を提供していきます。
「ゆるーくつないだ手を放して、酸素を細胞にお届け!」です。
全ての赤血球が酸素から手を放す前に血液は肺に戻ってきます。
そして肺でまた酸素と手をつなぐ…これの繰り返しです。
次回は酸素解離曲線の応用。
お腹の中の赤ちゃん(胎児)の場合を確認しますよ。