6 燃焼熱:化学反応と酸化のおはなし(1)
浸透圧維持、pH維持とおはなしをしてきました。
同様に、体温を維持することはヒトの生存に不可欠です。
どうやって体温(熱)を作っているか、考えたことはありますか?
今回からは熱の発生についてのおはなし。
体温の「コントロール」は、
熱の作り方が分かってからのおはなしですよ。
まず、化学の世界では「何か」が起こると熱の出入りが生まれます。
熱が生まれる(あつくなる)のが、発熱反応。
熱が奪われる(つめたくなる)のが、吸熱反応です。
「何か」を、化学の世界では「反応」と呼んでいます。
前回までにおはなししてきた相変化1つでも、反応です。
水(液体)が気体になるとき周りの熱を奪います。
これが吸熱反応。
「打ち水をすると涼しくなる」のはこのためです。
注射の前のアルコール消毒で「スーッ」とするのも、
アルコールが周りの熱を奪って気化した吸熱反応のせいですね。
ここで何も限定せずに化学反応についておはなしを始めると、
余りの種類の多さに大変なことになります。
それは困るので、ここではその1つ「酸化反応」に限定しておはなしです。
酸化の酸は、酸素の酸。
すごく簡単に言うと、酸素とくっつく反応が酸化反応です。
おだやかに酸素とくっつく反応は「酸化」。
激しく酸素とくっつく反応は「燃焼」です。
日常的に起きていることですよ。
金属がさびるのは酸化、火がついて燃えるのは燃焼ですからね。
『燃える』ことからも分かるように、酸化反応は発熱反応。
何かと酸素がくっつく(酸化・燃焼)と、光や熱が出ます。
光も熱も、エネルギーという意味では仲間。
本当は電気も、運動(動くこと)も、高さ(高い位置)も
エネルギー仲間なのですが…ここは物理にお任せ。
「エネルギー?…細胞のATP?」
こう思った人、大正解。
細胞がATPを取り出すことは、酸化反応です。
今回からのおはなしは、
細胞がATPを取り出す話の基礎でもあるのです。
では、酸化反応について少しずつ見ていきますよ。
あとで「グルコースをもとにATPを取り出す」細胞の代謝につなげたいので、
酸素とくっつくものはグルコース(ブドウ糖)にしましょう。
最初に結論。
1モルのグルコースを完全に酸化させると、
水と二酸化炭素と熱が出ます。
これを化学記号と矢印で表すと…。
C₆H₁₂O₆+6O₂→6CO₂+6H₂O+(熱)
こうなります。
矢印のもとの方(左側)がくっつく前の状態、
先の方(右側)がくっついた後の状態です。
電離平衡のおはなしでは両方向矢印(⇔)でした。
化学反応を示した式(化学反応式)では、一方通行です。
化学反応式のお約束は、
左右の水素(H)、炭素(C)、酸素(O)の数が同じになること。
ちゃんとそれぞれの個数があっていること、
数えて確認してみてくださいね。