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7 反応速度・触媒:体の中の化学反応(1)

ここからは「どんなときに化学反応は進みますか」がテーマ。

一般的な化学の世界では、

「熱く、濃く、触媒」で化学反応が進むようになります。

「熱く」は、前回までにおはなしした「加熱」のこと。

温度が上がれば上がるほど、化学反応は進みます。

「濃く」は、濃度が濃いほど化学反応は進みます。

同じ温度でも、0.1モルと1モルなら、

1モルのほうが化学反応が進みます。

「触媒」とは何か。

これは「自分自身は変化しないけど、あると反応を進ませるもの」です。

 

以前、使い捨てカイロのはなしをしましたね。

鉄(と酸素)だけではない、と書きました。

カイロの中には塩類(「~塩」)が入っていて、

これは自分が変化することなく鉄の酸化反応を早める働きがあります。

これが触媒です。

使い捨てカイロの中には水も入っていて、

これも鉄が酸化することを早めます。

でも、こちらは自分も変化してしまうため「触媒」ではありません。

使い捨てカイロの熱化学方程式は

4Fe+3O₂+6H₂O=4Fe(OH)₃+384kcal ですよ。

 

一般的な化学や生物の教科書で出てくる触媒の例は

オキシドール(過酸化水素水:H₂O₂)と二酸化マンガン(MnO₂)ですね。

オキシドールだけでも少しずつ酸素の泡が出てきますが、

二酸化マンガンをその中にいれると激しく泡が立ち上がります。

これは二酸化マンガンが触媒となって

2H₂O₂→2H₂O+O₂ の反応が急に進むようになったからです。

以上、化学反応を進ませるためには「熱く、濃く、触媒!」でした。

 

ここで、ヒトの体の中を見てみましょう。

ヒトの体温は深部温(表面ではなく、体の奥の温度)で37~38℃。

いくら化学反応を進めたくても、

これより温度を上げてしまっては「体温維持」ができません。

でも、ご安心あれ。

ヒトの体内では「ヒトの体内深部温で最大効率が出る」秘密があります。

それが「酵素」です。

酵素には多くの種類がありますが、

ヒトの酵素はヒトの深部温が最適温度です。

触媒との違いは、

温度をただ上げればいいという関係ではないこと。

反応は促進しますが、

働ける環境(ここでは温度)に限定があるのが、酵素です。

 

酵素には特異なpH(酸性・アルカリ性度合い)もあります。

原則として「その酵素が働くところが、酵素の最適pH」です。

例として、一番わかりやすいのがタンパク質の消化酵素。

タンパク質の消化酵素には「胃で働くペプシン」と

「十二指腸から小腸で働くトリプシン」があります。

胃は、pHのところでおはなししたように

強い酸性の胃液が出ますね。

そこで一番働ける(最大効率が出せる)のが、ペプシン。

トリプシンは膵臓で作られ、弱アルカリ性の膵液と一緒に出ます。

その弱アルカリ性で最大効率が出せるのが、トリプシンですよ。