11 各論5:細菌(2)桿菌のグラム陽性(4)

(c) ビフィズス属

ここからは桿菌、グラム染色(+)の嫌気性菌(通気性~嫌気性菌)。

嫌気性菌の、アクチノバクテリア網のビフィズス属からスタートです。

ビフィズス属は乳製品でおなじみ。

ビフィズス菌促進因子を含む母乳栄養の乳児では、

糞便中細菌の9割を占めるほどです。

酸を産生し、

腸管病原細菌の侵入、発育、増殖を防いでいると考えられています。

 

C ラクトバシラス属

通気性~嫌気性菌のラクトバシラスの一族も身近な菌。

非病原性のものが多く、発酵して酸を作ってくれます。

ヨーグルトやチーズに関係するブルガリクスやラクチスが代表どころですね。

常在細菌叢の一部でもあります。

膣で酸性を保ってくれるデーデルライン桿菌も、ラクトバシラスの一員です。

 

D クロストリジウム属

クロストリジウム属には有名どころが複数いますね。

破傷風菌、ボツリヌス菌、ディフィシル菌、ウェルシュ菌です。

これらは芽胞を作るグループ。

休眠形態まで殺菌できるかどうかが、消毒薬の強さの区分でしたね。

 

(a)破傷風菌

破傷風菌は土壌に広く存在する菌。

芽胞が菌の端に出来て、マッチ(や太鼓の「ばち」)の形になる菌です。

血液を含む培地で育てると溶血性があって、

コロニーの周りの赤色がなくなりますよ。

破傷風菌の侵入ルートは傷口(創傷)から。

創傷部位が虚血、壊死、酸素欠乏のような嫌気的条件が重なると、

芽胞から栄養型に変わって毒素産生を始めます。

毒素を作って悪さをし始めるまでが潜伏期ですね。

 

破傷風菌の毒素はタンパク質で出来た神経毒。

抑制担当の神経を邪魔するので、

筋肉が収縮し続ける「痙性麻痺」が起こります。

始まりは、運動神経末梢の麻痺。

「口が開かない!」という咀嚼筋硬直

(「咬痙」や「牙関緊急」)が見られます。

やがて脊髄でも毒素が悪さを始めます。

頚部、背部、下半身へと痙性麻痺が広がり、

骨格筋けいれんで呼吸も止まってしまいます。

潜伏期が短い(すぐに毒素を作り出す)と、

死の危険が高い(対応が追い付かずに呼吸停止!)ことが分かりますね。

 

治療は菌本体に対する抗生物質、毒素に対する血清療法。

そして対症療法としての気道確保、

人工呼吸器、筋弛緩薬も忘れてはいけません。

血清はウマ頼みで血清病が怖かったのですが、

ヒト由来の「破傷風ヒト免疫グロブリン(抗毒素血清)」も

出来るようになってきました。

 

…でも、やっぱり予防可能なら予防してしまいたいですね。

だから破傷風トキソイドワクチンは法定接種になっています。

ジフテリア・百日咳と一緒の混合ワクチンもありますが、

破傷風の単独ワクチンもありますよ。

外傷後、予防的にワクチン接種をするときには単独ワクチンを使いますね。

あとは傷を開放しておく(好気的環境)ことも、

破傷風の予防になりますよ。