5 脳神経系と内分泌系のおはなし(10)
自律神経系の通り道と伝達物質のおはなしです。
通り道…?「それぞれの神経」じゃないの?
たしかにその通りなのですが。
最初に結論。
「交感神経系は交感神経幹を通り、副交感神経系は神経節しか通りません」
交感神経系は脊髄をはじめとする中枢を出た後、
交感神経幹と呼ばれるところに入ります。
イメージとしては、交感神経幹はバスターミナル。
バスの発着所はある程度まとまっている方が便利ですよね。
中枢はバスの倉庫兼営業所(保管・管理をするところ)と思ってください。
交感神経幹を出た交感神経は、神経節に入ります。
こちらはもっと狭い目的地ごとに分かれています。
観光地の近くにある少し大きなバス停集合地です。
神経節を出た交感神経は目的の器官へ向かいます。
副交感神経系はどうかというと。
脊髄等の中枢(バスなら営業所)から出て、いきなり神経節です。
営業所自体が観光地の近くにあればよいのですが…そうもいかなかったようですね。
神経節から出たら目的の器官に向かうところは、交感神経系と同じですよ。
ここで覚えておくとよいのが、副交感神経系の「迷走神経」。
胴体(胸部・腹部)の器官のほとんどをカバーする副交感神経です。
名前のせいで何をしているのか分かりにくく、損している「迷走神経」ですが…。
消化器系のフルパワーモードは副交感神経系優位状態。
消化器系(胴体器官)をカバーする副交感神経系の「迷走神経」が、
「4 消化器系」の活動をコントロールしてくれているのです。
しかも、意識的命令不要の、自律的に。
とても大事な神経であること、分かってくれますよね。
神経幹・神経節のおはなしができたので、今度は神経伝達物質のおはなし。
かたや興奮担当、かたやリラックス担当。
全然違う神経伝達物質を使っているんだろうな…と思いきや。
実は、途中まではどちらも「アセチルコリン」です。
神経節から先は、
交感神経系はアドレナリンやノルアドレナリンを使います。
副交感神経系はそのままアセチルコリンを使い続けます。
途中までとはいえ、同じもので正反対の情報を運ぶのは驚きですね。
さらに、同じ神経系で同じ神経伝達物質を使っても、
違う働きが出ることもあります。
これ、全部「受容体」のせいです。
「受容体」というのは、文字通り受け止めるところ。
神経伝達物質を受け止めるところの違いが、
伝わる情報の違いになり、働きの違いになります。
少し長くなるので、次回続きを説明しますよ。