6 体温のおはなし(3)上部消化器系(+肝胆膵)(7)
(3)声帯
先程「声が出なくなるかも」といいました。
声を出すところが声帯ですね。
本来は呼吸器系と関係が深いところですが、
せっかくです、ここでおはなししてしまいましょう。
咽頭から喉頭に変わる境界部にある筋肉のカーテンが声帯です。
私たちが声を出すには、声帯で音を出す「発声」と、
咽頭と口腔の中で音を共鳴させて音を作る「構音」が必要です。
発声の基本は、空気の流れをふるわせること。
通常呼吸時は、声帯が左右に分かれ、
空気の流れを妨げません。
空気がふるえないので、音(声)は出ません。
声を出すときには、
声帯が左右からカーテンを閉めるように動き、
空気の通るところが狭くなります。
狭いところを勢いよく空気が流れると、
空気の流れがふるえます。
隙間風(ヒュー、フィー)や草笛(ピー、ブー)、
電線に風が当たる(ヒューン)などは、
全部空気の流れがふるえている音です。
これが、発声。
この音をもとに50音(や、それ以上)を
組み立てるのが構音。
ヒトは口腔だけでなく広い咽頭を持っているので、
他の動物にはない複雑な音を組み立てて、
会話することができるのです。
だから舌・口腔・咽頭がんでは
共鳴空間が腫瘍のせいで狭くなってしまうので、
「構音障害」が出るのですね。
声帯周りの「変!」として、声帯ポリープ、
声帯麻痺、喉頭がんについておはなしします。
声帯ポリープは、
声の濫用・多用により声帯粘膜の刺激が持続し、
粘膜浮腫や上皮の肥厚が起こったもの。
嗄声(させい:声がすれ)や高音が出ずに
音域が狭くなります。
カラオケの歌いすぎや、
各種応援で声を出しすぎた後の、あの状態ですね。
「声帯結節」も、ほぼ同じ状態です。
基本的には「使い過ぎを防ぎ(濫用防止:声の衛生)」や
「胃・食道逆流を防ぐ生活指導」の保存療法です。
なぜ胃や食道の話が出てくるのかについては、
もう少し読み進めていくと分かるはず。
あと、忘れられがちですが
「せき」は意外と声帯粘膜に負担をかけますよ。
手術になることもありますが、
同じような声の出し方をしていると
すぐに再発してしまいます。
手術創に痛みを感じなくとも
術後1週間は沈黙を守ってもらい、ネブライザーで保護。
あとは感染予防の抗生剤も欠かせません。
手術の合併症として術中圧迫による舌の腫脹や、
喉頭鏡を入れたせいで喉頭浮腫が出ることがあります。
呼吸苦や喘鳴(ぜいめい:呼吸時の
「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」音)が急に出現しますので、
ちゃんと注意していてくださいね。