2 「健康」とは:(3)「ヒトとして生きる」ために(1)
何とか動物として「よく生きる」ことができるようになりました。
いよいよ「ヒトとして生きる」に注目する番です。
いきなりですが、ヒトは社会の中でしか生きていけません。
もちろん、動物の多くもその「社会」の中で生きていくものです。
ここから先は特に「ヒト」に限定した「社会」とのかかわりを考えていきますよ。
まず、ヒトは社会から隔絶されると生きていけなくなります。
例えば、食べ物。
自宅で食べ物を作っている(栽培・畜産等)人以外は、
他の人がどこかで作った食べ物が必要です。
そして食べ物を作るためにも、
どこかで他の人の助け(電力、水道、種子入手等)が必要です。
だから「無人島に1人でサバイバル」のようなごく極限状態を除き、
「食事」1つにおいても他者とのつながり(「社会」)が必要になります。
そして「家族」は小さな「社会」そのものです。
家族は身内ではありますが…
極論すれば「あなた自身ではない人(他者)」ですね。
他者がいる以上、そこにストレスが生じるのは当然のことです。
家族構成やライフサイクルの変化で、ある日突然心身に影響が出るかも知れません。
もちろん、広い意味での社会的環境の変化や職業病が生じることもありますね。
職業固有のストレスを受け心身に影響が出た例として、
道路工事や樹木伐採時に使用する器具の振動による
白蝋病(はくろうびょう:レイノー現象)が代表ですね。
他にも病態学等で職業起因病について勉強できるはずです。
ここで、家族と広い意味での社会環境変化を見てみましょう。
現代の「家族」を取り巻く問題点が分かりやすくなりますよ。
一応、ここでは家族を「1つの家で暮らす」ものとして考えていきますからね。
戦後までの日本は「家」を主体とした家族形態をとっていました。
祖父母、父母、子の3世代が1つの家に住むことが当たり前だった時代です。
家族の構成員は広い年代に及び、
家の中で生も死も見届ける(家で生まれ、家で死ぬ)のが通常。
子も5人以上になることが多く、
家の中で兄弟姉妹との関係性から「社会性」を身に付けていきました。
病気にかかる機会は多いものの、
誰かが家にいて看病してもらえる…それが家族だったのです。
ところが「家族」形態は変容していきます。
戦後の価値観変化に伴い、古い家制度はすたれていきました。
結婚した夫婦は新しい家に移り住み(新居を購入し)、
夫婦と子が住む「核家族」が増えていったのです。
家族は親と子の2世代。
そして生まれる場所と死ぬ場所が家から病院へと変化しました。
病気にかかる機会は減り、病気になったら病院へ。
以前の家族の役割の一部が、次第に病院へと移動していったのです。
子の数は主に2~3人に減りました。
社会性は最低限のものを家の中で身につけた後、
幼稚園等で同世代との付き合い方を学んでいくことになるのです。
この先は、次回確認しましょうね。