2 「健康」とは:(3)「ヒトとして生きる」ために[補足5]
「補足2(運動)」のおはなしでもでてきた、
日常生活でも良く使われる「ストレス」という言葉。
もう少しだけ、詳しく見てみましょうか。
ハンス・セリエさんの提唱したストレス学説によると。
ストレスの原因になる各種刺激・欲求は「ストレッサー」といいます。
「身近な人やペットの死」のように悲しい出来事だけでなく、
一見嬉しいこと(レギュラーに選ばれた、昇進した等)も
ストレッサーになりえます。
生活環境などの外的刺激だけでなく、
強い不安といった内的刺激もストレッサーです。
これらストレッサーに対して、認知的評価、対処能力といった個性をはさみ、
ストレッサーに応じようとする体の緊張状態(ストレイン)・反応が
「ストレス反応」です。
身体面のみならず、心理面・行動面にも影響が出てくることになります。
体内で起こっている変化を確認してみましょうか。
主に働くのは自律神経系の交感神経系です。
ストレッサーがあると、
身体はこれを受けて衝撃(ショック)を受けます[ショック相]。
身体各種の反応(免疫反応等)が一瞬全体的に低下した状態になりますよ。
このままではストレッサーに押しつぶされてしまうといけないので…
「闘争か逃走か」に代表される交感神経系が働き、
副腎髄質からアドレナリンが分泌されます[抗ショック相]。
ここまでが「警告反応期」です。
ストレッサーから逃走できれば、ストレス反応は終了。
元の生活に戻ります。
ストレッサーと闘うことになったとき、糖質(グルコ)コルチコイドも分泌され、
全身の各種抵抗力が高まった状態が維持されます。
[抵抗期]と呼ばれる状態です。
でも、抵抗期は(個人差はあるものの)1週間から10日ぐらいしか続きません。
その間にストレッサーを解消できないと、
全身の抵抗力がガクンと下がってしまいます。
これが[疲弊期]。
こうなってしまうと気分が滅入り、病気にかかりやすい状態になってしまいます。
以上が、交感神経系とそこから命令を受ける内分泌系が主に働く
ストレス反応の概論です。
だから「運動が骨や筋肉に与えるストレス」というのは、
本当は「運動が骨や筋肉に与える外的刺激」のこと。
「刺激に抵抗するために、骨量や筋肉量が増えて、
ストレッサーを解消していく…」という過程が繰り返されて、
筋骨量維持と増加につながっていくのです。
次回は、「運動とストレス解消」についてみていきましょう。