4 行政・制度:(3)欠点の改良(2)[補足11]
後期高齢者医療制度について定める、
高齢者の医療確保に関する法律の目的部分。
3つ目の「前期高齢者に関係する保険者間の費用負担調整」のおはなしです。
現在の日本ではどこかに「勤めて」いる人が多いですね。
勤めている間は、健康保険
(健康保険法による全国健康保険協会、健康保険総会が「保険者」)に
保険料をストックしておきます。
定年(60歳が下限)を迎えて退職すると、保険料のストック先は国民健康保険
(国民健康保険法による市町村・特別区が「保険者」)に変わります。
そして勤めている間は医療機関にかかる頻度は少なく、
退職後に医療機関にかかる頻度が増えるのが一般的傾向。
さらに勤めているときと退職後では、
その人の収入額(保険料は収入額によって決まる)が違います。
何が起こるか、イメージできますね。
国民健康保険(のストック)は収入が少なく、支出が多い。
健康保険(のストック)は収入が多く、支出が少なくなります。
あなたが国民健康保険の立場だったら、
健康保険に文句の1つや2つ言いたいところです。
「ずるいよ!
何で収入が多くて支出が少ない年代だけ受け持つの?!」
この不公平の調整のために行うのが、
「前期高齢者にかかる保険者間費用負担の調整」です。
支出が多い年代を担当してくれる国民健康保険に、
健康保険(や公務員の入る共済組合や日本私立学校振興共済事業団など)から
お金を支払います。
こうすることで保険者間の前期高齢者(65歳から74歳)に対する
費用負担を調整(不公平を是正)しているのです。
これで国民健康保険の収入問題は一段落。
しかし支出問題も解消させないと、ストックの危機は止まりません。
そこで導入されたのが、国民健康保険の自己負担分改正です。
長い間、70歳以上の高齢者は
医療機関にかかったときの自己負担はありませんでした。
「年をとって病気になっても、安心して病院にかかれる」ように
作った制度でしたが、そのせいで
「どうせ無料だ!とりあえずいっとけ!」といった
不必要な受療行動が促進されてしまいました。
これでは、医療費の面でも、
「自分の健康は自分で守る意識の育成」の面からもよろしくありません。
そこで70歳以上74歳以下の人には
2割の自己負担を払ってもらうようにしました。
(反対があまりに強かったため、1割負担の経過措置時期もありました)
これなら不必要な受診は「お金がかかる!」ことに否が応でも気付き、
医療行動も変わるはずです。
高齢者でも、
現役世代と同じくらいの収入(目安は年収370万円以上)のある人は
ずっと3割負担になります。
収入問題解決と世代間不公平感を解消することが目的です。
75歳以上については、次回おはなししますね。