2 性感染症(STD)のおはなし(1)
早速、性感染症(STD)のおはなしをはじめましょう。
メインの解剖生理学でもおはなししましたが。
最初に大事なことをもう1回復習。
『性行為をすれば、自分か相手が妊娠する可能性があります。
妊娠はせずとも、性感染症に感染する可能性があります。
性感染症は、発見や治療が遅れがちになり、
しかも不妊の原因にもなります。
全身に病変が生じる可能性や、
胎児にも感染させて、先天奇形の原因にもなります。』
この意味、分かりますよね。
性行為はこのようなリスクを有する行為なんだよ、ということを
再確認できましたね。
では、もうちょっと具体的に見ていきましょう。
とはいえ、ご存知の通り性感染症は多岐にわたります。
全部おはなしはできないので…大事なところに注目。
TORCHという言葉がありましたね。
これ、胎児に先天的異常を生じさせる疾患の頭文字。
Tがトキソプラズマ、Oが「その他」、
Rが風疹で、Cがサイトメガロウイルス、
Hが単純ヘルペスウイルスでした。
Oにはクラミジア、淋菌、梅毒などが含まれましたね。
「解剖生理学」の「7 生殖器系」のおはなしのところです。
そこでは名前と最終結果しか紹介できなかったので、
こちらではもう少し個別の怖さを確認してみましょう。
まず、Tのトキソプラズマから。
トキソプラズマは、細菌でもウイルスでもありません。
「原虫」ですね。
同じ区分にあるものは「マラリア原虫」です。
トキソプラズマはヒトだけに入り込む微生物ではありません。
むしろ主生活の場はネコや鳥などの動物。
そこからヒトの体に入ってくると、
胎児に胎盤経由で感染します。
そうすると…死産、流産の原因。
生存できても脳や視力に障害が出てしまいます。
障害の程度の幅が広く、
遅効性もあるのでいつ症状が出てくるかわからない…
これが「先天性トキソプラズマ症」です。
普通の免疫状態の成人がかかれば、
数週間の軽い風邪状症状で済みますが…。
妊娠中に「初感染」すると、「先天性トキソプラズマ症」の危険です。
普段からペットを飼っている人は、抗体検査をお忘れなく。
特にネコは糞便中に感染力のあるトキソプラズマが出ますので、
可能な限り他の人にこまめなトイレ処理をお願いしましょう。
自分一人しかいないなら、使い捨て手袋必須です。
ペットだけではなく、土壌や生肉(他の動物)からも感染しますので、
土いじりも手袋必須。
生肉食は、しばし我慢した方がよさそうですね。
次回は、1文字飛ばして「R」の風疹のおはなしです。