5 ウイルスの増殖と検査の確認:HIVの例(1)
5、ウイルスの増殖と検査の確認(HIVの例)
ウイルスの増殖がイメージできるようになったところで、
もう一歩先へ。
ウイルスの増殖と検査について、
ヒト免疫不全ウイルス(以下、HIV)を例に確認してみましょう。
ここが分かると「空白期間」の意味と、
「あわてて検査をしてもいいことがない」理由が
納得できるはずですよ。
HIVは性行為で感染するSTD
(もしくはSTI:どちらも「性感染症」の意味)。
感染経路自体は母子、血液、性行為と様々ですが、
多くを占めるのは性行為経由です。
もちろん医療職である以上、
針刺し事故による感染可能性を無視してはいけませんし、
母体や胎児に与える各種影響を軽視してもいけません。
とはいえ、
まずは多い(大きい)ところから理解していくのが基本ですね。
感染のきっかけとなった性行為のあと、
保健所等にかけ込んですぐに検査をしても
正しい結果は得られません。
ホームページやチラシ、パンフレットには
「必ず2週間以上たってから、
可能なら1か月以上たってから検査を受けに来てください」
と書いてあるはずです。
ものによっては
「もっと後(3か月くらい経ってから)」と書いてあるかもしれません。
これ、「ウイルスの増殖」を思い出せば理由が分かりますよ。
HIVはRNAウイルス。
そして逆転写を行うレトロウイルスの一群でした。
ウイルスは、自分1人では増えることができません。
細胞の中に入って、
細胞の中にある道具と材料を使って初めて増えることができます。
1人で増えることのできる細菌と比べたとき、
(どちらも増えるために必要な条件がそろっていれば)
ウイルスの方が1回増殖する(1個が2個になる)のに時間がかかること、
イメージできていますか?
仮にいきなりRNAをmRNAとして使える
RNAウイルスだったとしても、
入り込んだ細胞が翻訳を始めてくれない限り、
増殖できませんね。
ましてや逆転写を必要とするHIVだと、
細胞のDNAに組み込むためのウイルスDNAを
逆転写で作るところからですから…
どうしても時間が必要です。