4 皮膚・粘膜のおはなし(3)
粘膜のアフタ同様、皮膚が傷ついて、治るおはなし。
皮膚では切り傷でイメージしてみましょう。
切り傷は、ごく浅いものでは血が出ませんね。
これは一番外側の表皮だけが傷ついた状態。
表皮には血管が通っていなかったから、
表皮だけの傷なら血が出ずに済むのです。
「血が出た!」ということは、
その下の真皮まで皮膚が傷ついた証拠です。
真皮は血管が多く、そこが傷つくと感染の危険が高まります。
だから血管に空いた穴を埋めて(止血)、
白血球たちが入ってきたものを処理。
それから、傷ついたところを治す作業が始まります。
血小板のお仕事は止血。
血管壁の傷を治す担当です。
このお仕事は白血球と同時進行で行われることも多いですね。
詳しくは生化学12「血液」のところへ。
https://5948chiri.com/bioc-12-6/
白血球たちが集まり、
活発に分解活動をすると周囲は赤く、腫れてきます。
痛みや熱が出てくることもありますね。
これは白血球たちが仲間を呼び、
自分達が活発に働ける状況を作り出している状態。
「炎症物質」がたくさん作られて、作用している真っ最中です。
しかも痛みや赤みがあれば、
私たちは「あっ!皮膚が傷ついてる!」と気付けますね。
気付けば水で洗ったり、包帯を巻いたりします。
つまり、損傷の拡大を防ぎ、感染を防ぐ行動を取れる…というわけです。
このおはなしは、
「糖尿病患者さんで末梢神経障害が怖い!」というところにつながります。
末梢神経障害を起こすと、この「痛み」が分かりにくくなります。
すると、皮膚の損傷を知る情報源が「視覚」だよりになりますね。
手ならすぐ目につきますが、
足はよほど気を付けないと見ようと思いません。
だから「糖尿病患者のフットケア」が大事になってくるのです。
寄り道から戻って。
傷ついたところを治す皮膚細胞のお仕事内容は「増殖」。
細胞分裂をたくさんして、欠けた部分を埋めるお仕事です。
そこで見えてくるのがピンクから赤色に見える「肉芽細胞」。
周囲の穴をふさぐもと(芽)になる細胞たちです。
肉芽細胞が損傷してあいた穴を埋め、
表皮までできたらもう一息。
赤色が引けば、もう少しで凹みや痕も消えるはず。
これが「傷が治った」状態です。
皮膚の傷の治り方、基本は以上です。
次回は応用編。
「縫合(いわゆる「縫う」)」のおはなしと、
傷の治り方について粘膜と比較をしていきましょう。