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4 皮膚・粘膜のおはなし(2)

皮膚と粘膜の基本がわかったので、

粘膜の「困った!」、アフタのおはなしです。

 

アフタとは口内炎のこと。

口の中に出来る炎症の全てが「アフタ」ではありません。

アフタと呼ばれるのは灰白色斑。

口の中に出来る白っぽい炎症だけです。

昔々はアフタは「潰瘍」の意味で使われていましたから、

白っぽくて凹んでいるのが、アフタですね。

 

アフタがなぜできるのか。

一般的には菌やウイルスが侵入した、免疫力低下、栄養不良、

体調悪化で出ることが分かっています。

でも、もう少し詳しく見てみることにしましょう。

 

口腔粘膜に一定以上の刺激が伝わると、

粘膜内でタンパク質分解酵素のプラスミンが出てきます。

プラスミンが刺激の元を分解してくれる…はずなのです。

でも、プラスミンが増えるとそこに

ヒスタミンやプロスタグランジンも出てきます。

いわゆる、炎症物質ですね。

炎症自体は侵入者を追い出し、体を守るための大事な働き。

でも、ヒトの立場からしてみれば

「…なんだか痛いよ!」になってしまいます。

 

ヒスタミンやプロスタグランジンの働きで、

痛みだけではなくむくみ(腫れ)も始まります。

そこは周囲の細胞を巻き込んで炎症(ただれやびらん)を起こし…

そこがえぐれて、陥没するとアフタ完成です。

ただれやびらんは、

どちらも皮膚や粘膜の表面が異常状態という意味。

あえていうなら、

びらんは薄皮が一枚むけて赤くなった状態。

ただれは水分や膿のたまった袋が破れてじゅくじゅくしている状態です。

 

ここまでが、アフタのでき方。

痛いし、結構大変なことになっているし…

と言う割には、アフタは早く治ります。

それは粘膜の構造と唾液のおかげです。

 

口の中の粘膜は、刺激物が多いので扁平上皮細胞からできています。

ダメになった細胞があっても、

積み重ねられて準備しておいた次の細胞が

内側から外側へと出ていくだけ。

穴もどんどん埋まります。

 

唾液は単に水分を補うための粘液ではありません。

中に含まれる酵素によって殺菌作用もあります。

消化酵素でおなじみなアミラーゼだけではなく、

ラクトフェリンやリゾチームも唾液にいますよ。

唾液が殺菌してくれれば、

傷で炎症が起こる可能性は下がります。

また湿った状態は体の中に近い状態。

細胞はどんどん増えることが出来て、

「傷が治る」のです。

 

ただし「単なる痛いじゃなくて、かなり痛い」ときには、

粘膜がはがれてしまった(粘膜剥離)可能性があります。

このときははがれてしまった粘膜部分が埋まるまで、

刺激をできるだけ避けてじっと我慢です。

こまめなうがいで、刺激物除去を手伝ってくださいね。

 

一応注意。

アフタができる病気には、一部重い病気も含まれます。

ベーチェット病や全身性エリテマトーデスなどの

自己免疫疾患の一部にアフタがよく出ることが知られています。

やたら繰り返すアフタは、病院へ!