4 皮膚・粘膜のおはなし(5)
皮膚について少しずつ分かってきたので、
皮膚の「困った!」のおはなし。
前回までの「(物理的な)傷」に続いて、
今回はアトピーのおはなしです。
アトピーは、アレルギー反応と関係のある症状のうち、
皮膚症状を伴うものの総称。
「どこに出るか不特定」という意味の言葉が、アトピーの語源。
だから皮膚のどこに出ても不思議ではありません。
何が起こっているのか、今までの知識をもとに確認してみましょう。
始まりはIg-Eという抗体が「なぜか」増えること。
生化学「1 細胞」でもおなじみの、ガードマンの1人ですね。
https://5948chiri.com/bioc-1-4/
このIg-Eというガードマンが増えると、
ヒスタミンという炎症物質が増えてきます。
ガードマンがこんなにいるということは、
きっとすぐに追い出しが必要になるんだろう…という準備ですね。
炎症物質によって、皮膚には赤み、かゆみが出てきます。
炎症物質でこれらの働きが出ること自体は、
体を守るうえでなんら間違ったことではありません。
でも、そのせいで「汗が止まる」ことが大問題です。
炎症物質が出たせいで、
汗腺は「それどころじゃないや!」と働きを止めてしまいます。
そのせいで、皮膚の表面が乾きやすくなってしまうのです。
皮膚の表面が乾くと…かゆくなります。
ここでかゆみに耐え切れずにかいてしまうと、
さらに炎症は強くなり、汗も出なくなり、もっと乾燥して…
もう手が付けられませんね。
これが「アトピーのかゆみ」の原因です。
始まりは、増えすぎたIg-Eでした。
しかも「なぜか」増えすぎてしまったことが原因です。
いろいろ考えられることはありますが、
「これだ!」と言い切れるものはありません。
遺伝的要因、化学刺激、各種の環境…
余りに多すぎて
「よく分からないけど、アトピーができた!」が本音です。
原因が分からなければお手上げか。
そんなことはありません。
できるところから、やっていけばいいのです。
一番困るのは「かゆみ」ですから、
とにかくそこを対策していきましょう。
「皮膚の乾燥を防ぐ」なら、すぐにできますね。
少なくとも乾燥由来のかゆみは避けられますし、
皮膚のバリア機能の1つ「保湿」の援護もできます。
具体的には、適切な温度での入浴・シャワーや加湿器。
皮膚に水分を提供することが目的なので、
皮脂を落としすぎてはいけませんよ。
基本はお湯のみ。
もしくは弱酸性の肌に優しいボディソープでやさしくなじませて、
しっかりと洗い流しです。
体をふくときも、ごしごしこするのではなく、
そっと水滴を押さえるにとどめましょう。
こうやって皮膚のバリアを補ってあげていれば、
炎症物質はやがて減っていきます。
そうすれば赤み、腫れも治まり、じきに通常の肌に戻ります。
次回、アトピーのお薬について少々補足しますね。