1 解剖生理学を勉強する理由(3)
「ヒトは、どうすれば生きていけるでしょうか?」
ここまで読んできた今の皆さんなら、答えることができますね。
心臓が動いて(循環器系)、
息ができて(呼吸器系)、
食べ物を食べられて(消化器系・泌尿器系)、
ちゃんと寝ることができる(神経系・内分泌系)…
これらが、生きるために必要な「正常」でいるための働きです。
さらっと泌尿器系が追加してあることに気付きましたか?
食べ物は、食べるだけでは不十分。
食べ物の残りかす(栄養物を吸収して終わった後)は、
ちゃんと外に出さないと次の栄養物を入れることができません。
「大事なものだ!」といろいろなものを取っておいたのでは、
部屋の中に新しいものを入れる場所がなくなってしまうことと同じです。
水に溶けない残りかす「便」は、消化管から外に出します。
水に溶ける残りかす「尿」を排出するためには、泌尿器系の働きが必要です。
そして、先に挙げた器官系は「必要最低限」にしかすぎません。
骨格系がないと、軟体動物状態です。
生殖器系がないと、子孫を残すことができません。
だから、どうしても解剖生理学は勉強することが多くなってしまうのです。
「正常」を知るために。
ヒトがヒトとして生きていくために。
次回から本格的に始める解剖生理学のおはなしは、
先に出た必要最低限の器官系を勉強して、
それから残りの器官系の勉強と進めていきます。
呼吸器系→循環器系→消化器系と泌尿器系→神経系と内分泌系のあとに、
筋骨格系と生殖器系のおはなしですね。
大事なことは先に言っておきますよ。
それぞれの器官・器官系は独立して存在しているのではありません。
常に、他の器官系と関連しあっています。
最初の質問「ヒトは、どうすれば生きていけるでしょうか?」は、
突き詰めれば「細胞は、どうすれば生きていけるでしょうか?」と同じ質問です。
だって、ヒトは多細胞生物。
細胞が生きていけないなら、ヒトとしても生きていけないのです。
だから、生物や生化学とかなり深く関係しています。
できるだけ「どこどこと関係しているよ!」と注意喚起していくつもりですから、
必要に応じて、生化学の対応するところも読み直してくださいね。
ものごとは、正常に(問題なく)動いているときはその重要性に気付くのが遅れます。
ヒトの体も、どこか不具合が出ないと健康のありがたみが分かりません。
そんなことになる前に、「正常」の重要性を理解しましょう。
生化学もそうでしたが、
解剖生理学を勉強することは自分の健康維持にも役立ちます。
「何の役に立つのさぁ!」の理由には、
「看護師国家試験の必須科目だから」「正常を知るため」だけではなく、
「自分の体を知り、健康でいる」ことも含まれることを忘れずに!