3 循環器系のおはなし(6)
生命に関わる異常心電図の続きです。
今回は「高カリウム血症」と「心筋梗塞」について。
高カリウム血症の特徴は「テント状T波」。
これ、キーワードですから覚えちゃってください。
T波がなだらかな丘でなく、
三角テントを張ったように尖って大きくなります。
このまま放置すると、R波は低くなりQRSの幅が広がって…
M字状になったら重症サインです!
本来細胞内に多いはずの
カリウムイオンが血液中に多くなってしまうと、
チャネルは開いていても、
細胞外へとうまく滑り出していけません。
カリウムイオンが細胞外へとうまく滑り出していかないと、
いつまでたっても細胞内がプラスのまま。
今度は待てど暮らせどナトリウムチャネルが開きません。
つまり「マイナス→プラス→マイナス」と
動かなくなってしまうのです。
すると、周囲の細胞に電気刺激が伝わりません。
周囲の細胞に電気刺激が伝わらないということは、
心臓の筋肉がまとまって収縮できないということですから…
心室が血液を送り出す役目を果たせないことになります。
だから
「高カリウム血症は、心停止の危険」があるのです。
こうなってしまう前に、
いち早く高カリウム血症状態を改善する必要がありますよ!
心筋梗塞の心電図は「大きな下向きQ波」が特徴です。
これまた正常心電図が分かっているなら、すぐに気付けるはず。
心筋梗塞というのは、
血液が届かなくなったせいで
一部の心筋が死んでしまった状態です。
死んだ細胞は電気を発生させませんし、
伝えることもありません。
穴のように内側の電気状態を素通しすることになります。
心筋梗塞を起こした細胞の真上の皮膚に電極があると、
生きている周囲の心筋から伝わってきた電流が、
空いている下の方(穴の下:心室)へと流れていきます。
心臓の内側に向かう波は「マイナス」なので…
大きな下向きQ波が出るのです。
一度死んでしまった細胞は生き返りません。
だから、そうなる前に対処しましょう。
心筋梗塞の最大原因は、
動脈硬化を起こして血液が流れにくくなること。
心電図ではT波が大きくなり、幅も広くなってきます。
さらに動脈硬化状態が続くと、
今度はT波が下向きになってしまいます。
これ、血液のめぐりが悪くなっている部分がT波を作る前に、
周囲の筋細胞からT波が流れ込んできてしまっています。
そのままにしておくと、
心筋の一部が虚血(酸素不足)状態になります。
するとST間が基準線から下がり、
それでも放っておくと逆にST間が基準線より上がってきます。
もう、これは心筋梗塞1歩手前の状態。
発見・対処が間に合わないと…細胞が死んで、心筋梗塞です。
以上、異常な心電図のうち
生命にかかわるものを説明してきました。
大事なことは「正常を覚えて、
生命直結レベルの異常にすぐ気付くこと」ですよ。
次回から、「めぐる場所:血管」のおはなしに入りましょう。
【今回の内容が関係するところ】(以下20220831更新)