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3 循環器系のおはなし(6)

2022年8月31日

生命に関わる異常心電図の続きです。

今回は「高カリウム血症」と「心筋梗塞」について。

 

高カリウム血症の特徴は「テント状T波」

これ、キーワードですから覚えちゃってください。

T波がなだらかな丘でなく、

三角テントを張ったように尖って大きくなります。

このまま放置すると、R波は低くなりQRSの幅が広がって…

M字状になったら重症サインです!

 

本来細胞内に多いはずの

カリウムイオンが血液中に多くなってしまうと、

チャネルは開いていても、

細胞外へとうまく滑り出していけません。

カリウムイオンが細胞外へとうまく滑り出していかないと、

いつまでたっても細胞内がプラスのまま。

今度は待てど暮らせどナトリウムチャネルが開きません。

つまり「マイナス→プラス→マイナス」と

動かなくなってしまうのです。

すると、周囲の細胞に電気刺激が伝わりません。

周囲の細胞に電気刺激が伝わらないということは、

心臓の筋肉がまとまって収縮できないということですから…

心室が血液を送り出す役目を果たせないことになります。

だから

「高カリウム血症は、心停止の危険」があるのです。

こうなってしまう前に、

いち早く高カリウム血症状態を改善する必要がありますよ!

 

心筋梗塞の心電図は「大きな下向きQ波」が特徴です。

これまた正常心電図が分かっているなら、すぐに気付けるはず。

心筋梗塞というのは、

血液が届かなくなったせいで

一部の心筋が死んでしまった状態です。

死んだ細胞は電気を発生させませんし、

伝えることもありません。

穴のように内側の電気状態を素通しすることになります。

心筋梗塞を起こした細胞の真上の皮膚に電極があると、

生きている周囲の心筋から伝わってきた電流が、

空いている下の方(穴の下:心室)へと流れていきます。

心臓の内側に向かう波は「マイナス」なので…

大きな下向きQ波が出るのです。

 

一度死んでしまった細胞は生き返りません。

だから、そうなる前に対処しましょう。

心筋梗塞の最大原因は、

動脈硬化を起こして血液が流れにくくなること。

心電図ではT波が大きくなり、幅も広くなってきます。

さらに動脈硬化状態が続くと、

今度はT波が下向きになってしまいます。

これ、血液のめぐりが悪くなっている部分がT波を作る前に、

周囲の筋細胞からT波が流れ込んできてしまっています。

 

そのままにしておくと、

心筋の一部が虚血(酸素不足)状態になります。

するとST間が基準線から下がり、

それでも放っておくと逆にST間が基準線より上がってきます。

もう、これは心筋梗塞1歩手前の状態。

発見・対処が間に合わないと…細胞が死んで、心筋梗塞です。

以上、異常な心電図のうち

生命にかかわるものを説明してきました。

大事なことは「正常を覚えて、

生命直結レベルの異常にすぐ気付くこと」ですよ。

次回から、「めぐる場所:血管」のおはなしに入りましょう。

 

【今回の内容が関係するところ】(以下20220831更新)