7 生殖器系のおはなし(13)
妊娠中期(5か月から8か月)の胎児の成長を確認しましょう。
妊娠5か月では、頭が鶏卵大になります。
身長約25㎝、体重約250g。
お母さんのおなかを蹴りだすのは、このころですね。
「蹴る」ためには、運動神経と筋肉が必要。
もちろん「関節で曲がる」ことでもありますから、
骨や骨周辺構造(軟骨、腱、靱帯、関節包)の完成…
でもありますね。
妊娠6か月では身長が約30㎝、体重約650g。
ここから、皮下脂肪蓄積のスタートです。
…ここまでは、
皮下脂肪が準備できていないということですね。
脂肪(脂質)の役割は、
ATPのもととしての貯蔵だけではありません。
ホルモン等の材料であり、「断熱材」でもあります。
お母さんのおなかの中は、
体温(深部温)でほぼ一定に保たれています。
細胞分裂はじめ各種細胞活動に適した温度ですから、
何も準備しておく必要はありません。
でも一度産まれたら…
今度は自分で体温を維持していかないといけません。
体温を作るのは筋肉の収縮熱と肝臓等の代謝熱ですが、
どんどん外界(気温)の方へと熱が逃げていってしまいます。
そのためにまた産熱していたのでは、
いくら栄養分があっても足りません。
だから体温を保つために
「断熱材」になる脂肪が必要になるのです。
胎児が断熱材として役立つ皮下脂肪をためるということは、
「お腹から出る準備を始めた!」ということです。
準備が終わる前に体の外に出てしまうと、
体温維持ができないため保育器で保温が必須になります。
さらには肺のサーファクタントも準備されていませんから、
酸素吸入のための管を入れることも必要ですね。
妊娠7か月では大分体がふっくらしてきます。
皮下脂肪が順調にたまってきた証拠です。
身長約35㎝、体重約1.1㎏。
もうすぐ、瞼(まぶた)も開くころ。
目の周りの「輪っか筋(眼輪筋)」の成長…ですね。
妊娠8か月から出産(大体、10か月)までが「妊娠後期」です。
妊娠8か月で、身長約40㎝、体重1.6㎏。
身長はほぼ完成。
子宮の中が狭くなり始めるころです。
だけど体重を見てもらうと分かるように、
まだ外に出るには準備不足。
例えば肺のサーファクタントはまだできていません。
今しばらくの辛抱です。
妊娠9か月。
身長約46㎝で、体重約2㎏。
表情が出てくるころですね。
心配していたサーファクタントもようやく完成。
でも、厚生統計的にはまだ「早産」の分類です。
低体重児(低出生体重児)の基準も体重2・5㎏未満。
「NICU(新生児特定集中医療室)だ!
注意が必要な状況だ!」という認識ですね。
できれば、あと1か月お腹の中にいたいところです。
そして妊娠10か月。
身長は約50㎝、体重は約3㎏になりました!
もう外に出ても大丈夫そうですね。
お父さんとお母さんに会いに行きましょう!
…以上、「超」駆け足で発生をまとめてみました。
始まりが「受精卵」という1つの細胞であること。
細胞分裂によって「ヒト」を形作っていくことが、
今までの勉強全ての総復習になっていること、
分かってくれましたか?
これで、解剖生理学入門(基本)のおはなしは終わりです。
「ヒトが生きていくということ」、分かりましたか?
それこそが「解剖生理学」で分かってほしいことなのです。
ここまで読んできた皆さんは、
詳しい解剖生理学や疾病論、
各種看護学の土台はばっちりです!
おはなしできなかったことはまだまだありますので、
そこはまたの機会に紹介していきますね。
【今回の内容が関係するところ】(以下20221025更新)