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2 皮膚(3)皮膚に必要なもの

皮脂の役目は、

皮膚表面の水分を守ることと、皮膚表面のpHを守ること。

皮脂は「お化粧崩れのもと!」と

日々邪魔者扱いされることが多いのですが…。

「水分を守る」と「pHを守る」の重要性をちゃんと理解してくださいね。

 

まずは汗(水分)を守る働き。

水分は蒸発することで体温を下げますが、

蒸発してしまうと皮膚表面に水分がなくなってしまいます。

水分が皮膚の表面にい続けるために、

水分より外側に(体表の一番外側に)油の膜が必要です。

この油の膜を作るのが、皮膚の脂腺から出る皮脂です。

油は常温で液体から気体になりにくいもの。

皮膚の一番表面にあれば、

水分の蒸発はある程度抑えることができそうです。

 

次にpHを守る働き。

これも皮膚の角質の物理的防壁の役目と関係があります。

物理的防壁で細菌等の異物侵入を防いだ後、

そこで細菌等がどんどん増殖してしまったら困ってしまいます。

細菌等を殺せなくとも、

せめて増えずにそのままでいてほしいもの。

そこで役立つのが皮脂による皮膚表面の弱酸性化です。

 

細菌の多くは、ヒト体内では活発に増殖できます。

これはヒト体内には栄養になるものがたくさんあり、

温度が増殖にぴったりであることに加えて、

ヒト体内のpHが増殖に適しているから。

 

pHというのは、酸性度合い・アルカリ性度合いを示す数値。

pH7が酸性でもアルカリ性でもない中性。

7より数字が少なくなると酸性で、

7より数字が大きくなるとアルカリ性です。

ヒト体内の代表、血液のpHはほぼ7.4(7.35~7.45)。

7より数字が少し大きいので、弱アルカリ性ですね。

 

ここで皮膚表面のpHを見ると、5.5前後。

こちらは7より数字が小さくなりましたので、弱酸性です。

多くの細菌は、

皮膚ぐらいの弱酸性ではあまり増えることができません。

これならば物理的防壁でブロックできて、

壁の前で増殖することもなく、手洗い等で洗い流されてくれそうです。

この弱酸性のもとになるのが皮脂。

正確には「皮脂(油)が酸化したものが弱酸性のもと」です。

 

「酸化」というのは、「酸素と手をつないだよ」ということ。

空気中に酸素がいますので、

皮膚表面に出た皮脂が酸素と手をつなぐと「皮脂が酸化した」です。

体の表面に分泌されて、水分を守る膜になりつつ、

酸素と手をつないで皮膚を弱酸性にする。

弱酸性の皮膚表面なら、

防壁で体内に入れない細菌等が壁の前で増えずに済みます。

皮脂の重要性、もう分かりましたね。