8 脂質代謝のおはなし(4)

前回までのおはなしと、

血液の働きによって細胞まで脂質が届けられました。

いよいよ、細胞レベルの代謝(狭い意味での代謝)の時間です。

 

最初に復習。

糖質(グルコース)1個からできるアセチルCoAは2個で、

酸素があれば36ATPができましたよね。

 

さて、脂質ですが…誰を代表にしていいか迷うところです。

とりあえずここでは

炭素16個のパルミチン酸に代表になってもらいましょう。

動植物細胞内に多く含まれる脂肪酸の1つです。

 

脂肪酸の異化(ATP取り出し)は、「β酸化」と呼びます。

β(べーた)とは、ギリシャ文字のBのこと。

Aに次いで、Bは2番目。

炭素2つずつで切れていく

(ベータの位置にある炭素で切れる)のが、β酸化です。

そして、β酸化の場所はミトコンドリアです。

はい、ミトコンドリアといえば酸素!

酸素がないと、脂質からATPは取り出せませんよ!

 

ちょっと具体的にβ酸化を見ていきましょう。

いつものように、最初に結論。

「脂肪酸のベルトがくるりと一周すると、

炭素が2つ少なくなった脂肪酸が1個できます。

同時に、NADHとFADH、炭素2個分の切れ端ができます。」

これが、β酸化のポイントです。

β酸化は、炭素2個のところで切れることでした。

脂肪酸の端から炭素2つ(絵ではベルトの穴2つ)のところで、

脂肪酸が切り取られます。

できるのは、短くなったベルトとベルトの端っこですね。

これが「炭素2個少なくなった脂肪酸」と「炭素2個分の切れ端」です。

実は「炭素2個分の切れ端」は、

ちょっと手を加えるとアセチルCoAになりますよ。

そして、くるっと回って炭素2個分で切っているときに、

NADHとFADHもできました。

どちらも糖質代謝のときに出てきましたよね。

呼吸鎖(電子伝達系)でATPに変えることができました。

 

では、脂肪酸1個で

このβ酸化を何回くるくる回ることができるかというと…。

 

答えは7回。

最後に炭素2個が残ります。

残った炭素2個の脂肪酸は、これまたすぐにアセチルCoAにできます。

だから、パルミチン酸1個がβ酸化されると、

アセチルCoAが7+1=8個

NADHとFADHが7個できるのです。

…さっき復習した糖質1個と比べてみてください。

4倍には届きませんが、

かなり多い量のアセチルCoA、NADHとFADHができましたね。

これ、全部TCAサイクル(クエン酸回路)や

呼吸鎖(電子伝達系)に入れたらどうなりますか?

 

…すごい量のATPができそうだ…

 

ですよね。

これが「脂質はATPの貯蔵庫」の理由です。

 

細かい計算はしなくていいですよ。

「糖質と比べて、脂質(脂肪酸1本)からは

ATPがすごくたくさんできそうだ!」

そこを理解してもらえれば十分です。