9 ヒトを取り巻く環境(3):生態系(9)
「二酸化炭素が温室効果の原因なら、
どんどん植物に吸収してもらえばいいんじゃない?
簡単でしょ?」
植物の光合成を勉強してきた皆さんは、
すぐにこう思いつくはず。
でも、ここにもヒトの行動の悪影響が出てきてしまいます。
森林破壊です。
住む場所を増やすため、農地を増やすため。
各種の目的でヒトは森林を切り開いてきました。
それが生態系の復元力を上回ると、植物が元に戻りません。
森林程効率よく二酸化炭素を吸収してくれる植生はありません。
つまり、二酸化炭素の吸収量がガクンと減ってしまうのです。
しかも森林を住みかとしていた動物も行き場を失い、
生態系が別なものへと変化していってしまうのですね。
森林破壊や温室効果による特定種の絶滅も重大ですが。
もっと直接的に(ヒトの活動の結果)
特定種が絶滅してしまう(絶滅生物)こともあります。
リョコウバトが有名ですね。
大群で移動する(「渡り」をする)もののヒトへの警戒心が低く、
肉も食用として重宝されました。
インディアン等の先住民は一定以上を狩らない
(季節によって狩りの可否を決める等)ため、
その生態系は守られていました。
しかし北米への入植が進むと、食用・衣類用(羽布団)等
各種目的に合致したリョコウバトは次々と狩られ、
「保護が必要」と分かったときには
もう自然界で種を保存できる状態ではありませんでした。
また、絶滅まではいかずとも、
生物種の構成を変えてしまうヒトの活動もあります。
「外来生物」という言葉を聞いたことがあるはずです。
意図的に、ときには全く意図せずに、
ヒトの活動によって本来の生息地以外で定着した動物が外来生物。
たいてい本来の生息地以外には天敵や競争相手がいないため、
増殖しやすくなっています。
すると、従来の生態系のバランスが崩れますね。
本来そこにいた生物(在来生物)が競争に負けて、
ごくわずかしか残らない(ときには絶滅する)こともあるのです。
イメージしやすいのがタンポポ。
道端にあるタンポポのがく(花の下)を見てください。
くるりと反り返っているのがセイヨウタンポポ(外来生物)。
がくが反り返っていない(花の下が丸い)のが
従来から日本にあるカントウタンポポ(在来生物)です。
おそらく、カントウタンポポはなかなか見つからないはず。
セイヨウタンポポの増殖で競争に負けてしまったせいです。
まだ「セイヨウ」や「アメリカ」と付いていれば
どれが外来生物か分かりますが…。
名前だけではもう外来生物か分からないものもたくさんあります。
「身近な生物は外来生物だった?!」なんてことは
決して珍しくないのです。