4 固体と液体・溶解(3):浸透圧とぎゅうぎゅうすかすか液体版
化学の「溶ける」おはなしの続き。
「溶ける」の分かりやすい例は「水に溶ける」ですが…。
溶媒になれるのは、水だけではありません。
水性ペンの文字は、書く場所を間違えなければ水で落とせますね。
これはインクの色(色素)が水に溶けるからです。
では、油性ペンで書いた文字は?
シンナーや除光液(マニキュア落とし)で落とせます。
これも、油性ペンの色素がシンナーや除光液に溶けたからです。
シンナーや除光液は有機溶媒と呼ばれます。
「『有機』って何だろう?」と思いますよね。
実は、有機と無機の違いは結構微妙で難しかったりします。
だから、ここではとりあえず。
「炭素(C)を含んでいないものと、一酸化炭素、二酸化炭素、炭酸ナトリウム等は無機!
それ以外の炭素を含むものは有機!」としておきます。
…本音は「炭素(C)の有無」で分けられれば楽だったのですが。
一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO₂)、
炭酸ナトリウム(Na₂CO₃)などは無機の仲間なので、仕方ない。
とりあえず最初の判断としては「有機は、中に炭素があるもの」でいいですよ。
有機溶媒は「他の物を溶かすことのできる有機化合物」です。
「化合物」はいろいろなものが組み合わさってできているもの。
「有機」の文字がありますから、炭素は含まれていますね。
そして「溶かすことのできる」ですから、常温では液体ですね。
有機溶剤は水に溶かせないものを溶かすことができたので、
油性ペンやマニキュアを落とせた…というわけです。
気体になると空気より重く、独特なにおいがあり、
引火しやすい(勝手に火が付きやすい)のも特徴です。
看護の世界で出てくる有機溶媒としては、
注射前の消毒に使うエタノールと、「アセトン」を覚えておきましょう。
アセトンは一般的な除光液の成分で、
糖尿病患者さんの吐く息に出てくるものです。
なぜ糖尿病になるとアセトンが出てくるのか…については、
生化学はじめ他の科目で勉強してくださいね。
「水に溶ける」「水に溶けない」は
分子(粒)が水と仲良くできるか(なじむことができるか)にかかっています。
「分子のうち水なじみのいい部位」を親水基、
「水とはなじまず油なじみのいい部位」を疎水基と呼んでいます。
親水基の代表がカルボキシル基(COOH)、
疎水基の代表が炭素と水素でできた鎖(炭素水素鎖・炭化水素鎖)です。
他にもたくさんの親水基と疎水基がありますが、
まずはこの2つから覚えてください。
カルボキシル基がついている分子の代表が単糖(糖)やアミノ酸。
水なじみ、すごくいい感じです。
あとで出てくる酢酸も、カルボキシル基持ちですよ。
炭素水素鎖付きの分子の代表は脂肪酸…つまり脂質です。
脂肪酸にはカルボキシル基もついていますが、
水嫌い部分が大きいので、分子全体としては水嫌い(疎水性)になっています。
…ここでシンナーや除光液の成分を見てみましょうか。
シンナーの主成分はトルエン(C₇H₈)、
除光液の主成分はアセトン(C₃H₆O)。
どちらにも、炭素と水素の鎖があります。
炭素と水素の鎖があったら水嫌い。
水嫌い同士なら、仲良く手をつないで自由に動いていける…。
これが「溶ける」で理解してほしいことです。
以上が、溶解の基本のおはなしでした。
次回はここから応用させていきますよ!