5 電離平衡・中和(2):体のpHを守るために
電離度という言葉も説明しておきましょう。
水以外のものが水に入ったとき、
どれだけプラスとマイナスに分かれるかを示したものが、「電離度」。
よく教科書等で出てくるお酢(酢酸:CH₃COOH)は
電離度をα(アルファ)としてα=0.01。
何を言っているのかというと。
「お酢を水の中にいれると、
1%(1/100)のお酢の粒がCH₃COO⁻とH⁺に分かれるよ。
残りの99%(99/100)は、お酢の粒のままだよ!」ということです。
さらに、酸性とアルカリ性って何なのさ?というおはなしですが。
昔は「水に溶けてH⁺を出したら酸性、OH⁻を出したらアルカリ性」という
シンプルなものでした。
それからたくさんの定め方(定義)がされましたが…
看護の世界では、もっと簡単にいきましょう。
「H⁺の濃度が、水より濃いなら酸性。薄いならアルカリ性」で十分です。
実際に、酸性度合いアルカリ性度合いを示すpHという数値は、
H⁺の濃度の対数を取って数字の部分をとったもの。
正しくはpH=-log[H⁺]という式ですが…
ここも簡単に。
「pHはH⁺の濃度によって決まる!
10のマイナス何乗かを示す指数の部分がpHだ!」…でオッケーです。
ここまで分かれば、ヒトの体のpHも理解できるはず。
血液の正常pHは7.40±0.05。
7よりもpHの数字が大きいということは…
H⁺の濃度が、水よりも薄いということです。
水は[H⁺]=10⁻⁷モル/ℓ。
血液は[H⁺]=10⁻7.4モル/ℓです。
「数字が大きいから、H⁺の濃度は濃い!」なんて思っちゃだめですよ。
指数にマイナスがついていますから、
数字が大きいほど実際には「小さい数」です。
10⁻²mは0.01m=1㎝。
10⁻³mは0.001m=1mmですからね!
お酢は濃さにもよりますが、だいたいpH3。
こちらは水よりもH⁺が濃いですね。
その理由は、水の中で電離しているから。
粒の100個に1個しか電離(α=0.01)しなくても、
溶液全体を見れば結構H⁺の濃さが変わって、
酸性になることが分かってくれますね。
ヒトのpHのうち、覚えておくと便利なところを追加しましょう。
酸性の代表「胃液」と、
アルカリ性の代表「膵液・腸液」です。
あとは「二酸化炭素は水に溶けると酸性」も大事になってきます。
ここについては次回、説明しますね。