1 切った!(切創)
解剖生理学実用編その2。
ここからは応急手当のおはなしです。
せっかく勉強したんですから(するんですから)、
生活に役立てていきましょう。
…もっとも、怪我や病気をしないのが一番なんですけどね。
始めは「切った!(切り傷:切創)」から。
切り傷にはいろいろなレベルがあります。
紙で切って、血が出ない…のも表皮の切り傷。
包丁等でざくっと大血管が切れてしまって、
血が脈打ってあふれ出してくるのも切り傷です。
血が出ていないなら、とりあえずは心配無用。
感染の心配はしなくてよさそうです。
ただ、人体最大の物理防御の皮膚が傷ついたことは事実。
傷口を軽く洗っておきましょう。
あとは皮膚の細胞たちがちゃんと治しておいてくれます。
血が出ていたら、まずは止血したいところですね。
そのためには、血の出方をチェックしましょう。
一般的な出血(紙で切って血が出た等)は、
まず水道水でいいので周りを洗い流し、
周囲を少し押して入り込んでしまった菌を
血と一緒に外に押し出してしまいましょう。
あとは傷口の上にガーゼ等を当てて、
数分圧迫すれば血は止まるはずです。
あとは、血小板たち(かさぶた:血栓)にお任せです。
血栓がちゃんと固まるまでは保護した方が安心ですが、
固まった後は乾かしてしまっても問題ありませんよ。
数分の圧迫で血が止まらないときは、
動脈や静脈が切れた可能性がありますね。
どちらが切れてしまったかは、
血の色と血の出方で分かります。
普段見る血の色で、じわじわ染み出してくるのは静脈が切れたもの。
普段よりもはるかに鮮やかな色で、
脈拍に合わせてあふれ出してくるものは動脈が切れたものです。
どちらにせよ、もう病院にお任せするレベルですね。
でも、病院到着まで出血しっぱなし…では
ショック(全身の酸素欠乏による重大な身体症状)を起こして
大変なことになってしまうかもしれません。
だから、できるだけ止血点を押さえながら病院へ向かいましょう。
止血点は、原則として脈を取れるところ(動脈)にあります。
切り傷を作ったところより体の中央側の、
圧迫しやすいところを押さえるのです。
手ならば、橈骨動脈と尺骨動脈。
腕ならば上腕脇の近くの上腕動脈。
足ならば膝上の太もも内側の大腿動脈。
顔ならばこめかみの上の外頸動脈ですね。
運動後や入浴後に、
どこが脈打つところか(止血点のある動脈か)
確認しておくと安心できますよ。
圧迫は、可能ならば手や指で押してください。
面倒だから…とひもで縛ってしまっては、
縛ったところが血液不足になってしまう危険があります。
どうしても、というならスカートの丈調節用のゴムバンド。
包帯よりも幅が広く、固定しやすいので
1本あると意外と便利ですよ。