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11 精神のおはなし(3)3大欲求障害、時期・段階に特徴的な障害(7)

学習障害(特異的発達障害)というのは、

知的発達に遅れがなく、

視聴覚や運動能力に大きな問題はなく、

生育環境・教育環境が適切で、

本人のモチベーションがあるにもかかわらず、

ある限定的な能力障害によって、

知的能力から期待される学力が身につかず、

学業成績や日常生活に明らかな支障をきたす障害です。

 

前提条件がたくさんあることに気が付きましたか?

知的発達条件、運動機能条件、

教育等環境条件、本人意欲条件…

これらが「学習」の前提に必要なのですね。

 

これらに障害があるなら、

そこの改善なくして「学習」ははかどりません。

学習障害の具体例としては、

字が読めない「読字障害」、字を書けない「書字障害」、

算数(数字)が分からない「算数障害」があります。

 

治療は、「治療教育」と呼ばれる基礎の反復練習です。

「これはこう読めばいいんだ」、「こうすると、書けるんだ」、

「数字って、こういうものなんだ」という、

一見当たり前すぎて気付きにくい点を「学習」していくのです。

 

先程の前提条件にもなっていた、

知的発達に支障が出てしまうのが「知的障害(精神遅延)」。

知的能力と適応行動の双方に制限が出てきてしまう状態です。

遺伝的、身体的素因の影響が大きく出てきます。

脳神経細胞の働きが何らかの形で「変!」になって、

知的活動・発達が阻害されていることが考えられます。

新生児スクリーニングをはじめとする各種スクリーニングで、

早期に危険性や状態を把握。

例えば、フェニルケトン尿症を放置すると、

発達遅滞が起こりうることは

代謝異常のところでおはなししましたよ。

あとは家族支援と社会制度の活用が大事になってきます。

 

広汎性発達障害は、

小学校卒業以前とその後をつなぐ存在です。

広汎性発達障害(自閉症スペクトラム障害(ASD)

:自閉スペクトラム症)は、

「社会性や対人コミュニケーションの障害」と

「興味・関心の限定と繰り返し行動」を

特徴とする神経発達障害です。

約100人に1人の発症とされていますから、

けっこう身近な存在ですね。

遺伝要因と環境要因の相互作用によって

発症するとされています。

「環境要因として関係があるかも?」とされているのが、

妊娠性糖尿病や出生時低酸素症、

1500g未満の低出生体重児です。

イメージとしては、

胎児の(脳)細胞成長が不十分になってしまうと、

その働きの途中で「変!」が出るかもしれないよ…

ということですね。

 

広汎性発達障害には「必ず出る症状」はありません。

時期ごとに出やすい(気付きやすい)兆候がありますので、

それを紹介しておきます。

乳幼児期には

「視線が合いにくく、微笑み返さない、

他人に興味を示さない(社会性障害)」、

「同フレーズの繰り返しやオウム返し

(コミュニケーション障害)」、

「手順や物の配置が違うと著しい不快やパニックを示す

(興味関心の限定)」が出ます。

 

小学校低学年では「授業参加困難(社会性障害)」、

「文章をうまく作れない(コミュニケーション障害)」、

「ルールは厳格に守るが、

突然の変更に弱い(興味関心の限定)」ですね。

 

小学校高学年になると

「強い孤独やいじめの対象(社会性障害)」、

「難しい言葉は知っているが

日常会話が困難(コミュニケーション障害)」。

ゲーム等に没入し、

熱中しているものを中断されると激昂する(興味関心の限定)ため、

家庭内暴力にもつながってきます。

 

中学生・高校生では日常生活へのこだわりが強く

(興味関心の限定)、

被害的解釈を起こして、不登校や引きこもり

(コミュニケーション障害)になってしまうこともあります。

 

これら各段階に応じた、

的確かつ細やかな支援が必要になってきます。

しかも各種不安障害やうつ病の合併率も高いため、

本人と家族だけではとても対処しきれません。

社会的サービスや家族会など、

活用しうる社会資源について

ちゃんと情報提供してあげてくださいね。