2 ケース2:手術は成功したけれど(2)
なぜAはアウトになったのか。
それは「Aが何かやばそうなことに気付かなきゃいけなくて」
「そのやばい状態にならないように何とかしなくちゃいけなかったのに」
「それなのにやばい状態を生じさせてしまった」から、アウトなのです。
1つずつ、一緒に確認していきますよ。
あなたが、とあることについて何もやばいと思わなかったとします。
そのまま事件(事故?)が起きたとしましょう。
他の人たちはみんな「やばい」と気付いていたら、
「何で気付かなかったの?普通気付くでしょ?」と言われちゃいますよね。
法律の世界では、
『普通の人が気付くのに、気付かなかったことによるうっかり』があったら、
アウトに一歩前進です。
今回の事件では、電気器具のプラスとマイナスを逆につないでしまいました。
逆につないで、動かないだけならまだラッキー。
普通は変なところが熱くなって、煙も出て一大事!です。
しかもただの電気器具ではなく、医療用の手術機器。
患者さんに何か取り返しのつかないことが起こってしまうかも!
…今、あなたは「何かやばそう…」と思いましたよね。
それこそが「一般人のやばそうと気付けた」です。
続いて「何とかしなきゃいけなかった」について。
Aは病院手術室勤務20年の大ベテラン。
手術に使う電気メスの準備を任せられていたレベルです。
それなら、電源コードがプラスマイナス逆になっていないかどうか
確認することは楽勝で出来ますね。
先程私たちがやばそうと思った内容の
「患者さんに何か取り返しのつかないことが起こるかも」を、何とかできたのです。
しかもAは医療従事者。
医療従事者は、
全身全霊・最大限の注意をもって患者さんの安全を守る義務があります。
できる限りの力をもって、
患者さんの身体・生命の安全を守ることが仕事なのです。
何とかできたという意味でも、
何とかするべきだったという意味でも。
Aは「やばい状態にならないように何とかしなきゃいけなかった」のです。
まとめておきましょう。
Aは「やばそうだ」と気が付かなくてはいけなくて、
「やばい状態にならないように何とかしなくちゃいけなかった」のに、
それなのに「やばい状態」を生じさせてしまいました。
だから、アウトだったのです。
最大限の注意で患者さんの安全を守らなければいけなかった以上、
電気機器端子の再度確認を忘れたことは、
「最大限の注意」を払っていなかったことになりますからね。
次回は、Bについて見ていきますよ。