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6 体温のおはなし(3)上部消化器系(+肝胆膵)(9)

(4)嚥下障害

嚥下(「飲み込み」)は、

口腔と咽頭の協同作業です。

「うまく飲み込めない!」というとき、

まず疑ってほしいのが物理的原因。

「形がそもそも変!(奇形)」、

「痛い!(炎症等)」、

「狭すぎだ!(内腔狭小化・圧迫等)」などが考えられますね。

狭くなる原因には腫瘍も含まれますね。

口腔から咽頭にかけての腫瘍はそこまで多くありません。

主に、粘膜由来の扁平上皮癌になります。

タバコと酒、どちらも嗜む人は

相乗的に発生しやすくなりますよ!

 

物理的には問題ないぞ、

というときには筋肉と神経を疑いましょう。

自己免疫疾患の多発性筋炎や、重症筋無力症等で

咽頭筋が害されることが分かっています。

神経系では、

かなり後でおはなしする筋委縮性側索硬化症(ALS)で

迷走神経が害されて飲み込みに影響が出ます。

迷走神経は自律神経の副交感神経系で、

胴部器官ほぼ全てをコントロールしている神経です。

副交感神経系優位は、消化器系にとってフルパワー状態。

迷走神経は、消化器系で常にお世話になる大事な神経ですよ!

窒息や誤嚥については、

呼吸器系のところでおはなししますね。

 

 

・おまけ:筋肉のおはなし

突然ですが、ここで筋肉について確認しましょう。

筋肉は体温を作る産熱器官であり、

心臓や血管、その他体の各所が「動く」ために

必要不可欠なところでもあります。

「動く」ためにATPが必要なのは、

解剖生理学や生化学で勉強してきた通り。

一緒に出てくることが多い骨や関節については、

「呼吸(骨格)」のところでおはなししますね。

 

筋肉は主にタンパク質からできています。

筋肉の役目は「動く(収縮し弛緩する)」こと。

動くためにはアクチンタンパクと

ミオシンタンパクの滑り込み構造が必要でした。

しめ縄状のアクチンタンパクの溝に、

曲がるストローの先端に球が2つ付いた

ミオシンタンパクの球がはまり、

ストローの首が動くためにATPが必要になるのです。

ミオシンの束が一斉に首を動かして

アクチンの間にねじり込んでいき、

両端にある1対のアクチンの距離

(1対のアクチンの端から端までの長さ)が短くなる…

これが筋収縮。

 

ミオシンの首が動くきっかけは、

神経細胞からの電気(「動け!」という中枢からの命令)です。

これが、筋肉の基本。

意図的に動かせる(随意筋)が骨格筋、

意識しなくても動く(不随意筋)は主に内臓筋。

不随意筋の中でも特殊なものが心筋。

動き続ける必要性が高いので、

筋肉細胞だけど電気を作れる刺激伝導系がありましたね。

これらの筋肉は、骨と一緒に骨格を作り、

器官の「動き」を担当するため、

筋肉のみが「変!」になることはそこまで多くはありません。

多くはないものの…重大な病気はありますので、

大事なところだけをおはなししますね。