4 ケース4:輪郭のない世界(4)
医師についての確認が終わったので、B病院について確認しましょう。
そもそも、B病院が責任を負う相手になりうるのか?
まず、病院に「~法人」と名前がついているなら、
法律の世界では責任を負う相手になります。
「~法人」と書いてなかったら、
病院の代表者(院長先生とか)が責任を取る相手です。
「それって責任を負う相手が現場にいなかったり、
人間じゃなかったりするんですよね?
今までのアウトになる条件、満たさないんじゃないですか?」
いい気付きですね。
民事でアウトになる条件は1つではありません。
これから紹介する新しい条件でアウトになる人は
「人を使って(雇って)いる人」です。
他人を雇っている人がいて、
その雇われている人が「雇われた内容に関係したアウト」をしたら、
雇っている人がアウトになります。
分かりにくかったら、賠償を請求する患者さんの立場になって考えてみましょう。
医療事故があったとき、
まずはその医療行為をした人に対して賠償金を請求しますね。
でもその人にはお金がありませんでした。
きっと奨学金を返済しながら生きていくのに必死だったのでしょう。
お金をたっぷりと持っていると思われる病院が
「自分がしたことじゃないもん、払わないよ」といったら、
あなたはそれで納得できますか?
感情的に納得できないけど仕方ない…という人もいますが。
「そんなの納得できるか!あなたの病院であったことでしょうが!」
これが一般的な反応だと思います。
法律はこういったことを踏まえて、
雇って(収入を上げている)いる人に賠償責任を認めました。
被害を受けた人が金銭的に損することのないように。
「被害者救済」が目的の賠償責任です。
では、B病院を当てはめてみると。
B病院は医師C、Dを勤務させていました。
他人を雇っていますね。
医師Dが、医療行為提供でアウトになっています。
これは雇われている内容に関連したアウトです。
はい、新しい条件に当てはまりました。
B病院はアウトです。
Aの家族はB病院に対しても賠償金を請求できます。
病院(雇う人)としては「やることは全部やったのに、アウトなの?!」
と思うことでしょう。
セーフになる可能性は、ゼロではありません。
ただし残念ながら
「人を雇って利益を出している以上、この責任からはめったに逃れられない」
そう思っておいた方がいいですね。
「む…?医師Dにも、B病院にも請求可能?二重取りできるの?」
それはできません。
法律が病院に賠償請求を認めたのは、「被害者救済」のためです。
二重取りは救済目的から外れてしまいます。
「…じゃあ、どちらに請求?片方ずつ?」
それでは時間も手間もかかりすぎて、被害者救済になりません。
だから被害者はどちらにでも、全額をいきなり請求できます。
そして早く支払った方(請求を被害者から受けた方)は、残ったほうに
「あなただって賠償金払うんでしょ。
まとめて払っておいたから、あなたの分は私に支払ってよ」と請求できます。
結論として、二重取りは生じないのです。
次回は「あなたの医療行為がセーフか」考えていきますよ。