5 ケース5:たかが検査、されど検査(3)
最高裁判所の判断、確認していきましょう。
「高等裁判所は『以下のところ』を判断していないよ。
最高裁判所は事実を確認する裁判所じゃないから、
高等裁判所さん、そこのところもう1回やり直してね。よろしく。」
『以下のところ』を考えると、きっと医師Cはアウトになるのでしょう。
『以下のところ』とは、因果関係をどんな事実から判断するか…でした。
「裁判における因果関係って、
自然科学のような厳密さはいらないよ。
いろいろな証拠を集めて、総合的に考えて、
特定の事実が特定の結果を引き起こしたといえる一定の可能性が認められれば十分。
通常一般人の人が疑いを持たないレベルなら、
因果関係は十分証明できてるよ。」
…厳密ではないらしいけど、これだけではよくわかりませんね。
だから、具体的内容も見てみましょう。
「Aの症状は一貫して快方傾向。
ルンバールの結果、得られた髄液も感染から無事に回復していることを示していたね。
そして、ルンバールをした後に患者さんが吐くことがよくあるから、
食事の前後は避けることが通例だったんだよね。
しかも、Aは血管が弱かったのに、
泣いて暴れているときにルンバールをしたんだよね。」
ここまでは、今までに出てきた事実。
ここから先が、因果関係についての最高裁判所の判断です。
「化膿性髄膜炎って、再発の危険性低い病気だよね。
かたや、Aがけいれん発作起こしてからのB病院の対応は
脳出血に対応したものだったよね。
しかも、ルンバールのあと15分くらいでいきなりけいれんでしょ?
ルンバールが脳出血を引き起こす可能性、
このときのAにとってはかなり高かったよね?
今言ったことを総合的に考えると、
通常の人はルンバールしたからAの障害が生じたということに、
疑いを持たないと思うし、
それで裁判所が判断を下すには十分だよ。」
思い切り要約すると。
抽象的にはどちらからも起こりうるけど、
いろいろな具体的事実からすれば、
通常一般人が疑いを持たないレベルに因果関係が認められるなら、
ちゃんとどちらから結果が起きたか判断できるよ!ということです。
結果、やり直しの高等裁判所(差し戻し審)は
Aの障害とルンバールの間に因果関係が認められて、
医師Cはアウトになりました。
…じゃあ、どうすれば医師Cはセーフになったのでしょう?
次回は医師Cだけでなく、他の医療チームメイトの立場からも
「どうすればアウトにならずに済むのか」考えてみましょう。