8 下部消化器系・生殖器系のおはなし(3)生殖器系(1)
生殖器系は、生殖をして次の世代を残すことが役目。
骨盤もただの枠ではなく、
その役目に合った性差がありますね。
骨盤は上半身と下半身をつなぎつつ、
可動域を維持するために
前を狭く後ろを広くした円筒状の構造をしています。
「円筒状」なので、
生殖器系はじめ多くの器官が中に入り込むことができます。
でも、そのままでは下に抜け落ちていってしまいます。
そこで必要なのが骨盤底筋群。
弾力のあるハンモックのように各種器官を支えてくれます。
「壁」ではなく「ハンモック」なのは、
体の中から外に出る穴をあける必要があるから。
尿や便を出す穴ですね。
さらに女性は生殖で育んだ子を
体外に出すための穴も必要になります。
だから骨盤底筋群には男性で2つ、
女性では3つの穴が開いています。
穴が多いということは、
筋肉でカバーできない部分が多いこと。
もとより筋肉が弱いのに、
便秘しがちで穴が多く、
さらに出産というイベントが加わる以上、
どうしても女性では骨盤底筋群が弱ってしまいがちです。
これが「臓器脱が高齢女性に多い」理由です。
女性の体の準備は
「子を体外に出すための穴」だけではありません。
骨盤を上から見たとき、
女性では内側が円に近い形をしています。
これ、子宮が大きく膨らんだときに
周囲から必要以上の圧迫を加えないための形です。
妊娠を想定していない男性の骨盤内側を上から見ると、
丸みのある三角形。
さらに骨盤の真正面をつなぐ靱帯(恥骨結合)の左右にも注目。
左右の恥骨角が大きいのが、女性の特徴。
こうすることで恥骨結合が広がり、
経腟出産時に産道が広がりやすくなっているのです。
男性では恥骨結合が広がるような作りになっていませんよ。
1 男性生殖器系の異常
男性生殖器系は、
前立腺と精嚢以外は「体の外」にありますね。
精子を作るのに適した温度が、32℃前後と低いからです。
体の中にいたのでは
「あつすぎ!」で、うまく精子を作れません。
だから胎児期に
「生殖器系のもと」が男性生殖器系に分化したなら、
「体の外」に出る大脱出をすることになります。
このときに通るのが、
ヘルニアのところで出てきた鼠径管。
途中でひっかかってしまうと(停留精巣)、
精子をうまく作れません。
もちろんねじれるなんてことになったら(精巣捻転)、
血行ストップで精巣生命の危機です。
無事に精巣や精巣上体が陰嚢に収まれば、
大脱出の成功です。