10 核酸・遺伝子のおはなし(9)

2018年7月7日

「情報の変わりやすさがこわいRNA!」と前回出てきました。

では、変わったらどうなるのか。

ここでは「鎌状赤血球症」の例で勉強しましょう。

 

赤血球は赤くて平べったい円盤状の血球。

酸素を運んでくれる、とても大事な働きがあります。

正しい赤血球は、とある部分の塩基構造が

「CCCGAGGAA」となっています。

暗号を解くと、プロリン・グルタミン酸・グルタミン酸と書いてありますよ。

ところが、ある日塩基構造が1つ変わってしまいました。

「CCCGGGAA」が変化後の塩基です。

ちょうど真ん中のアデニンが、ウラシルに変わっていますね。

これをコドン表に入れて解読すると…

プロリン・バリン・グルタミン酸になってしまいました!

塩基1つが変わったことで、タンパク質の1次構造が変わってしまったのです。

しかも、これだけでは終わりません。

タンパク質は1次構造が変わると、3次構造も変わります

3次構造が変わるということは…

性質が変わる「変性」が起きるということ。

赤血球は、形も働きも変わってしまいました。

平べったい円盤型が、三日月のような形(鎌状)になってしまいました。

これでは酸素を効率よく運ぶことができません。

1つの塩基が変わった結果、赤血球の形も働きも変わってしまった。

これが「鎌状赤血球症」です。

 

鎌状赤血球症は

たった1つの遺伝子(情報がのっている部分)が変わったせいで起きた病気です。

このように1つの遺伝子が原因になっているものを

「単一遺伝子疾患(単一遺伝子性疾患)」と呼びます。

代表は先程確認した鎌状赤血球症です。

じゃあ、原因が1つの遺伝子ではなかったら。

それは「複合的(遺伝子)疾患」ですね。

原因が遺伝子だけではないときには「複合的疾患」といいます。

世の中の疾患(病気)の多くは、この「複合的疾患」です。

だから、例外の「単一遺伝子疾患」はしっかり覚えましょう!

単一遺伝子疾患は鎌状赤血球症!

他にも単一遺伝子疾患はありますけど、

鎌状赤血球症だけは間違えてはいけませんよ!

 

ちなみに。

鎌状赤血球症は赤血球が酸素を運びにくくなる病気です。

ひどい貧血が起きますので、日本で生活している限りは重い病気です。

でも、鎌状赤血球はマラリアに強いという特徴があります。

 

マラリアが流行している地域では、

鎌状赤血球の原因遺伝子は、ヒトが生き残るために有効なのです。

鎌状赤血球症は進化論等の「適者生存」にもつながっていくのです。

ただし、鎌状赤血球を引き起こす遺伝子が

父親からも母親からも来てしまうと貧血が重すぎて生きていけません。

片親からだけもらうのが、マラリアに強く生き残りやすい状態です。

これを「鎌状赤血球遺伝子をヘテロにもつ」といいますね。

この「ヘテロ」という言葉については、次回おはなししましょう。