13 各論7:ウイルス(1)DNAウイルス(1)
ここからは「生物?」か怪しい「ウイルス」のおはなしに入りましょう。
微生物各論の、最終ブロックですね。
ここもかなりたくさんの種類がありますので、
情報記録にDNAを使うか、RNAを使うかで大別しましょう。
最初に注意点。
DNA組のヘルペスウイルスグループ以外は、
1グループに代表となるウイルスは1種類だけです。
ヘルペスウイルスグループだけは、ちょっと気合を入れて頑張りましょう。
RNA組は…グループ自体が多く、代表ウイルスも1つだけではありません。
RNA組が始まるときにもう1回注意事項としますけれども、
「RNA組はグループも代表もいっぱいいるぞ!」と思っておいてください。
DNAウイルス組に含まれるのは、
アデノウイルス科、パルボウイルス科、ポックスウイルス科、
ヘルペスウイルス科、パピローマウイルス科、ヘパドナウイルス科ですね。
それぞれの科(グループ)の代表ウイルスは、
ヘルペスウイルス科以外は1つです。
でも、その代表ウイルスが原因になる病気は1つとは限りませんからね。
A アデノウイルス科
アデノウイルス科の代表はアデノウイルス。
周りを包むエンベロープのない、正二十面体のウイルスです。
細かい型(サブタイプ)が多く、
タイプによってヒトの体で悪さをするところの違いがあります。
まとめると「結膜」、「呼吸器系」、「消化器系」ですね。
どれも分泌物(目やにや痰)や糞便から感染が広がるため、
院内感染に注意が必要ですよ。
流行性角結膜炎(「はやり目」)は、
眼科が定点報告として届け出が必要な5類感染症。
7日~14日の潜伏期を経て白目が赤くなる(充血)、
まぶたの腫れや裏側のぷつぷつ、涙が止まらない等の症状がでます。
伝染性が非常に強いため、院内感染要注意です。
お医者さんが「学校に行ってもいいよ」と言うまでは、出席停止ですからね。
同じく目に出るのが咽頭結膜炎(「プール熱」)。
こちらは小児科が定点報告する5類感染症です。
潜伏期は5~7日で、その後に充血、発熱、咽頭痛が出てきます。
小児(特に学童)のプールに関係して一気に感染が広がるので、
主症状が消えてから2日が過ぎるまでは出席停止になります。
プールの夏だけではなく、冬にもアデノウイルスには注意が必要。
冬の小児に多いのが急性咽頭炎です。
その実態は…
咽頭の赤みと頚部リンパ節の腫れが出る「かぜ症候群」ですね。
「何だ、たかが『かぜ』か」ではありません。
そこから肺炎を起こしてしまうと乳児は重症化しやすくて危険!
のどから胃に入ると急性胃腸炎。
腹痛、下痢、嘔吐だけなら
「単なるかぜ症候群?」で済まされてしまいそうですが、
これまた乳児では腸重積症を合併する可能性があります。
腸重積症は血液が腸管に届かなくなってしまう
絞扼性イレウスの原因ですよ!
なお、泌尿器系に感染することもあります。
他の部位の感染から手指経由で、
急性出血性膀胱炎が出現することがあります。
男児に多く、血尿や頻尿、残尿感が出ますが、
10日ほどで自然によくなるはずです。
あとは性行為で感染し、
尿道炎や子宮頚管炎の原因にもなりうるのがアデノウイルスです。