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13 各論7:ウイルス(1)DNAウイルス(2)

B パルボウイルス科

パルボウイルス科はアデノウイルスと似た形

(エンベロープなし、正二十面体)。

1本鎖DNAでウイルス情報を伝え、

ヒトにかかるウイルスとしては最小です。

そんなパルボウイルス科の代表はヒトパルボウイルスB19。

単に「パルボウイルス」と呼ばれることも多いですね。

このパルボウイルスB19は、

気道から入り込み赤血球の前段階「赤芽球」に感染します。

ワクチンや治療法で有効なものはなく、

輸血による感染や経胎盤感染する可能性がある、意外と怖いウイルスです。

 

具体的な悪さの例としては「伝染性紅斑(リンゴ病)」。

両頬がリンゴのように赤くなる(紅斑)と、四肢に発疹がでます。

感染症法5類の、小児科定点届出対象です。

成人で伝染性紅斑にかかると、関節炎も出てきます。

女性だと関節リウマチと勘違いされることもありますね。

「どうして女性?なんで勘違い?」と思ったら、

病態学の関節リウマチのところを確認しておきましょう。

 

あと、重症貧血発作もお忘れなく。

赤芽球にパルボウイルスが感染したせいで、

酸素を運べる赤血球が足りなくなってしまったせいです。

基礎疾患として溶血性貧血があると、すごく重い貧血になってしまいますよ。

妊婦さんがこの状態になると、胎盤経由でパルボウイルスが胎児にも感染し、

胎児死亡や胎児水腫(むくみや胸水・腹水)、

胎児高度貧血が起きてしまう可能性がありますよ。

 

C ポックスウイルス科

先程までのパルボウイルスが「最小ウイルス」なら、

ポックスウイルスは「最大ウイルス」です。

ここには結構たくさんのウイルスがいるのですが…

看護師国家試験に出てくるのは痘瘡ウイルスですね。

 

痘瘡(天然痘)は、感染症法1類感染症。

そして予防接種の始まりになったのが痘瘡ワクチン(「種痘」)です。

上気道から入り込み、局所リンパ節で痘瘡ウイルスが増えていきます。

増えた後は血液に入り込み(ウイルス血症)、

高熱と激しい頭痛、四肢の痛みと特徴的な発疹を作ります。

発疹は紅斑がスタートで水泡に変わり、膿疱になって、

カサカサの皮(痂皮)を作ります。

この痂皮がはがれ落ちるまでは、ずーっと感染力のある状態。

痂皮がはがれてしまえば、あとは回復していきます。

痘瘡ワクチンのおかげで1977年にでた患者さんを最後に自然発生はなく、

1980年にWHOが「痘瘡(天然痘)根絶宣言」を出しています。

 

ポックスウイルスに含まれるウイルスを1つ補足。

自然治癒してしまうので重視されない水いぼ(伝染性軟属腫)の原因が、

伝染性軟属腫ウイルスです。

接触性スポーツや性行為といった直接接触や、

タオル共用による間接接触でうつるウイルス。

水いぼのなかにウイルスが詰まっていますよ。

かゆみがあるので、

掻いて自分の体の他部位に広めてしまうこともありますね。