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4 総論:免疫(6)抗体

さて、「抗体」と一言で済ませてきましたが

…抗体には5種類ありましたよね。

初めて体に入ってきた異物に対して(一次応答)は、

異物に対するY字状のところが5つある(5量体)のIg-M。

異物が2回目以降の侵入なら(二次応答)、

異物反応部位は1つ(1量体)でも、すぐにたくさん作れるIg-G。

すぐにたくさん作れる理由は、

一次応答時のTリンパ球やBリンパ球を残してある(免疫記憶)からですよ。

腸管内や母乳中に分泌される(分泌型)のは、

異物応答部位が2つ(2量体)のIg-A。

1量体にはIg-Gの他にあと2種類ありますね。

Tリンパ球の分化に関係しているIg-Dと、

アレルギーに関係するIg-Eです。

 

ここで抗体についてもう少し詳しいおはなし。

微生物は免疫応答を誘導するための

「免疫原性(がある)」、「完全抗原」とも呼ばれます。

一部異物は、他のタンパク質とくっつかないと抗原にならない

「不完全抗原(ハプテン)」との対比ですね。

 

そして抗原情報を受けて抗体が作られ、

抗体が抗原を捕まえる(抗原抗体反応)と、「抗原抗体複合体」ができます。

これができると「タンパク質は沈降」し、

「鞭毛は不動化、線毛は定着阻害」を受けます。

そして「ウイルスにくっついて細胞内侵入を防ぐ」作用もあります。

「タンパク質」には微生物が作った毒素も含まれ、

中和(有毒作用を示さなくなる)されます。

細菌は移動手段(鞭毛)も細胞にとりつく手段(線毛)も奪われますね。

これなら、落ち着いて白血球たちが異物処分できそうです。

だから抗体をたくさん作れる二次応答は大事。

一次応答を人工的に終わらせる予防接種の重要性も、

これなら分かってもらえるはずです。

 

予防接種のおはなしは、あとで「国レベルの侵入防止」でする予定です。

ここでは予防接種の「中身」について少し補足しておきますね。

 

予防接種の多くは「不活化ワクチン」。

「死んだ微生物」のイメージです。

当然ヒトの体の中に入っても(死んでいますから)何も悪さをしません。

だけどヒトの体に残る免疫情報がどうしても短時間になりがちです。

そもそも「免疫情報が残らない」ことすらあります。

 

仕方ないので…

「変性させて毒性だけ失わせた毒素」を注射するのが「トキソイド」。

どうしようもないときに

「生きている微生物」を注射するのが「生ワクチン」です。

生ワクチンは効果(免疫情報)が長持ちしますが、

生きている微生物である以上どうしても副反応が出やすくなっています。

生ワクチンの代表はBCG(結核)ですね。

 

これら微生物を入れて免疫を成立させるのが「能動免疫」。

能動がある以上、受動もありますよ。

出来上がった抗体だけを入れるのが「受動免疫」。

ヘビ毒の血清治療や、

母子免疫(胎盤経由のIg-G、母乳経由のIg-A)は受動免疫ですね。

 

「Ig-Gは胎盤を抜ける」ということで、

忘れてはいけないのがRh不適合妊娠。

Rh血液型に対する抗体は、Ig-Gで作られます。

Rh(-)の女性がRh(+)の児を妊娠すると、

出産時の出血によって「Rh(+)は異物だ!」と抗体が作られます。

2回目以降のRh(+)児の妊娠は、

胎児(の赤血球)が異物認定されて母体白血球の攻撃を受け、ひどい貧血に!

なお、一般的なABO式血液型の抗体はIg-M。

『ABO式血液型の不適合妊娠』が問題にならないのは、

抗体が胎盤を抜けない(胎児が攻撃されない)からですね。