8 各論2:原虫(2)

(3)胞子虫類

胞子虫類には3つも紹介が必要な原虫が出てきます。

マラリア原虫、トキソプラズマ、クリプトスポリジウムです。

先程鞭毛虫類で性感染症のおはなしをしたので、

ある種関係の深いトキソプラズマからおはなししましょう。

 

トキソプラズマ・ゴンディイ自体は性感染症ではありません。

ネコ科の体内でのみ嚢胞体(オーシスト)を作って、

糞便から体外に出ていく性質があります。

だからネコ糞便に汚染された水からの経口摂取が1つの感染ルート。

ネコのトイレを処理した後の手は、

しっかり洗わないと立派な侵入ルートになりますよ。

また、トキソプラズマ原虫のいる食肉(牛、豚、羊等)の

不完全な加熱による経口摂取も1つの感染ルートです。

他には臓器移植と経胎盤感染で胎児に移るルートもありますね。

 

トキソプラズマで病変が出るのは、易感染性宿主のみ。

だから胎児で出る「先天性トキソプラズマ症」と、

易感染状態(日和見感染)に「後天性トキソプラズマ症」が問題です。

特に胎盤経由で胎児に感染する「先天性トキソプラズマ症」は、

TORCH(のT)に分類される重大な病気。

早流産や死産のように、生命を奪うことがあります。

脳内石灰化や水頭症、網脈絡炎、精神発達遅滞のように

将来に残りうる病変が出ることもありますよ。

日和見感染として(後天性トキソプラズマ症)出るときには、

脳炎や肺炎、網脈絡炎が主症状です。

 

クリプトスポリジウムも経口感染の可能性がありますね。

嚢胞体(オーシスト)の形で口から入り、

小腸に着くと胞子小体(スポロゾイト)に変わって、

微絨毛に侵入・定着します。

このせいで水様性下痢や嘔吐・腹痛が出ますね。

あわててヒトの体がクリプトスポリジウムを

体外に追い出そうとしているのです。

脱水に注意しつつ、

便に出たクリプトスポリジウムで感染を広げないようにしてくださいね。

熱に弱いので煮沸はよく効きます。

塩素には強いので、水道水(塩素消毒)汚染には要注意ですよ!

 

マラリア原虫が原因のマラリア熱は三日熱、四日熱、熱帯熱、卵型の4種類。

全部ハマダラ蚊が介在します。

そしてワクチンはありません。

せいぜい治療薬の予防内服ぐらいです。

だから「蚊に刺されないこと」が最大の防御方法になります。

 

蚊の体内から胞子小体(スポロゾイト)が送り込まれると、

まずマラリア原虫は肝臓で増えます(肝細胞内増殖:赤外型増殖)。

増えた後、メロゾイドが出てきて赤血球に侵入・増殖(赤内型増殖)。

赤血球の形が異常だと、マラリア原虫がうまく入り込めません。

生化学で勉強した

「単一遺伝子疾患の鎌状赤血球症はマラリアに強い」というおはなしです。

赤血球でマラリア原虫は増殖した後、

赤血球を破って原虫が血液中に出てきます。

このときに熱が出て、赤血球が減るので貧血が出てくるのです。

マラリア原虫増殖に72時間(3日)かかるので、

4日で1サイクルなのが四日熱マラリア。

他のマラリア原虫は48時間(2日)かかりますよ。

そして壊された赤血球を処理するために脾臓が腫れてきます。

これが脾腫。

マラリア感染が長期化すると「ずっと巨大」な巨脾になります。

マラリア原虫はヒト体内ではただ増えるだけの無性生殖。

これならすぐにワクチン等を作れそうですが…

残念ながら蚊の中で有性生殖をして多様性を維持してしまいます。

 

マラリアの中で一番死亡数が多いのは熱帯熱マラリア。

「悪性マラリア」とも呼ばれますね。

その理由は重症化しやすく、多臓器不全(MOF)を引き起こすから。

原因はマラリア原虫(に入り込まれた赤血球)が、

微小血管の各所で詰まるからと言われています。