10 脳神経系のおはなし(1)中枢の基本構造と血管異常(5)
(2) 虚血・塞栓
血液関係の「おかしい!」は
出血だけではありませんね。
「血液が足りない!」も大問題です。
A 一過性脳虚血発作、もやもや病
血液不足の始まりともいえるのが、
「一過性脳虚血発作(TIA)」。
左右の頚動脈系又は椎骨脳底動脈系の血管支配虚血で、
脳の局所的機能が一時的に失われる状態です。
脳に血液を届ける血管は、
内頚動脈と椎骨動脈でしたね。
左右の椎骨動脈は合流して脳底動脈になってから、
左右の内頚動脈とウィリス動脈輪を作っていました。
ただ、動脈輪より先(個別の栄養領域)では、
もう動脈吻合はありません。
心臓の冠動脈同様、
1か所が詰まったらそこから先の細胞は即ピンチです。
「一過性」の「虚血」ですから、
「つまった!(塞栓・血栓)」の一歩手前。
2~3割は、詰まった状態の脳梗塞に移行してしまいます。
だから安静にしつつ、薬物療法で「つまった!」を防止です。
ここは脈・血圧(血管系)のおはなしの復習ですね。
あとはそれ以上進行することのないよう、
高血圧、脂質異常、糖尿病等の危険因子を
うまくコントロールしていってください。
ウィリス動脈輪入り口部分で、
閉塞が起きてしまったものが
「もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)」。
左右の内頚動脈終末部が徐々に狭窄又は閉塞することで、
異常血管が頭蓋内に出現してくるものです。
異常血管は「先に血流届かないとヤバい!」と
急ごしらえで作った細いもの。
だから脳細胞生存にギリギリの血液量しか運べません。
その結果、「泣く」、
「熱いものを冷まそうと息をかける」等の行動で、
小児では脳虚血症状が出て見つかることが多いです。
けいれん、構音障害、失語、視野障害、知覚障害、
半身麻痺等が脳虚血症状ですね。
成人では脳虚血症状より、
突然の頭痛や意識障害といった出血症状で
気付かれることが多くなります。
動脈輪付近に「もやもや」と見える
細い血管の集まりが見つかったならば、
血行再建のために手術をすることになりますよ。