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10 脳神経系のおはなし(1)中枢の基本構造と血管異常(4)

脳ヘルニアは、

はみ出したところの働きが変になってしまいます。

大脳と小脳を分ける硬膜は

「小脳テント」と呼ばれています。

その小脳テントの上(大脳側)の圧力が

高くなったものがテント切痕ヘルニア。

押されるところは脳幹で、

意識障害、呼吸障害、視野障害、麻痺が出てきます。

対光反射の喪失が出たら、

明らかに中脳が圧迫されていますね。

 

小脳テントの下(小脳側)の圧力が

高くなったものが大孔ヘルニア。

脳脊髄液の流れが妨げられて水頭症を起こし、

延髄が圧迫されて

重い呼吸障害や意識障害を引き起こして

生命に危険が迫ります。

急いで脳圧を下げる必要がありますね。

 

開頭減圧術等の外科的処置がとられます。

脳へのダメージを最小限にとどめるために

低体温療法を行うこともあります。

水頭症を起こしているなら、

ドレナージも追加。

ドレナージの管理はもちろん、

人工呼吸器等の全身管理をしていくことも必要ですよ。

 

血腫から脳ヘルニアを起こすと、

意識レベルが良好でちゃんと受け答えできていても、

急変しうることを覚えておいてください。

硬膜と脳表面の間(くも膜や軟膜周辺)に

血腫ができると、急性硬膜下外傷性頭蓋内血腫。

こちらは最初から意識障害が出ることが大部分です。

 

慢性進行する血腫もありますよ。

受傷から数週間かけて、ゆっくりと進行します。

症状は頭痛、活動性低下、認知障害、尿失禁、片麻痺。

高齢男性かつアルコール多飲歴のある人に多く出ます。

慢性血腫の存在と受傷の事実を知らないと、

他の病気を疑われてもおかしくありません。

本人や家族から、

外傷(受傷)の事実をちゃんと聞きだしてくださいね。

これら血腫は外科的に穴をあけて、

取り除くことになります。

血腫がなくなれば圧迫もなくなりますから、

比較的早く症状は回復するはずです。