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11 精神のおはなし(1)せん妄、認知症、うつ病(7)

でも、やっぱり抗コリン作用が

使いにくくて仕方ありません。

そこで出来たのが

「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」。

三環系・四環系を「旧世代抗うつ薬」、

選択性セロトニン再取り込み阻害薬以降を

「新世代抗うつ薬」と呼ぶこともあります。

 

「選択的」とあるように、

セロトニンだけを増えた状態にします。

抗コリン作用が出現しにくかったため、

めでたしめでたし…と思いきや、

別の副作用が出てしまいました。

それが嘔気・嘔吐といった消化器症状です。

また、選択性セロトニン再取り込み阻害薬を使うときに

気を付けなくてはいけないのが「セロトニン症候群」。

これはセロトニンが正常濃度で出る

「副作用」ではありません。

セロトニン濃度が「中毒域」になってしまったときに出る

中枢神経系の症状です。

下痢・発汗から始まり、振戦やミオクローヌス、

運動失調が続きます。

放置すると失見当識・固縮を起こして、

てんかん重積発作や心血管系の虚脱が起こり、

昏睡から死に至ります。

 

また、一般的な抗うつ薬使用で出うるのが

「アクチベーション症候群」や「中断症候群」。

アクチベーション症候群は、

今まで抑えられていた「衝動」が

元に戻る(時には過剰になる)せいで、

不安・焦燥感や衝動性が出てくること。

静座不能(アカシジア)が出ることもありますよ。

「正座」ではなく「静座」不能。

主観的にも客観的にもじっとしていられない状態です。

中断症候群は、

その名の通り抗うつ薬の急な中断で生じる

嘔気、めまい、不安、頭痛等のこと。

薬の自己中断をしてはいけない理由の1つですね。

 

(3)非薬物療法

非薬物療法にはいろいろありますが、

主に用いられるのは精神療法。

「どこに注目して何を変えていくのか」で、

これまたたくさんの種類があるのですが、

良く使われるものが「認知行動療法」です。

 

これは偏ったものの考え方・とらえ方(認知)を、

バランスの取れたものに変えていく方法です。

 

例えば、メールやラインの返事が来なかったとしましょう。

うつ病の人では

「…嫌われた…自分のせいだ…」と罪責感や抑うつ気分を増強させがち。

このときに「そうじゃない理由」を

思い出せたら、どうなるでしょうか?

何か手を離せない作業中だったら、

スマホを手にして返事することはできませんね。

この例を思い出せたら、

「嫌われた」「自分のせいだ」と考えなくて済みます。

「すぐメールやラインの返事が来なくて悲しい」や、

「何してるんだろう?ちょっと不安…」等は残るかもしれませんが、

感情の下向き度合いはかなり変化するはずです。

これが認知行動療法です。

 

精神療法のスタートは、

「うつ病」というものを正しく理解してもらうところにあります。

「一進一退があり」、「治療には約3か月かかること」。

「なまけではなく病気」なので、

「できる限り休養をとる」こと。

「出された薬は欠かさずに服用」して

「治療が終わるまで重大な決定は先のばし」。

そして「自殺をしないように」ですね。