3 循環器系のおはなし(3)
細胞の膜電位を理解していきましょう。
「心筋収縮にかかわる話だ!」の
意識を忘れないでくださいね。
まず、細胞の中と外は
プラスとマイナスがつり合った状態か…というと。
実は、細胞内はマイナスに傾いています。
これはカリウムチャネルのせいです。
「チャネル」というのは、
決まったイオンだけが滑ることのできる滑り台。
濃度が高いほうから低いほうへとイオンが滑り出していきます。
カリウムチャネルということは、
カリウムイオンだけが滑る滑り台です。
「カリウムは細胞の中に多い(濃度が高い)」でしたよね。
だから細胞の中から外へと滑り出していきます。
内外のプラスマイナスのバランスが取れた状態から、
カリウムイオン(K+)のプラスが外に出ていくので、
細胞内はマイナスになります。
これが、「静止膜電位(-70mV)」の理由です。
これを初期状態としておきますよ。
そもそも、どうして細胞内にカリウムイオンが多いのか。
それは細胞膜に
ナトリウムカリウムポンプというものがあるからです。
細胞の外にあるカリウムイオンを細胞内にかき込み、
代わりに細胞内のナトリウムイオンを
細胞外にかき出すポンプです。
チャネルと違って、
プラス(Na+)が出ていく代わりにプラス(K+)が入ってきますから、
細胞内外のプラスマイナス変動原因にはなりません。
「ポンプ」という以上、原動力が必要。
原動力はATPです。
ATPを使ってまでもカリウムイオンを細胞内にかき込んだほうが、
きっと細胞にとっては気持ちいいのでしょう。
チャネルやポンプは、
細胞膜に埋まっている「膜タンパク(質)」ですよ。
ここに電気刺激が来ると、ナトリウムチャネルが開きます。
ナトリウムイオン(Na+)は
細胞の外に多く(濃く)存在しますから、
細胞の外から中にプラスが流れ込んできます。
細胞内はマイナスからプラスに傾きます。
細胞内がプラスに傾くと、
ナトリウムチャネルの蓋がしまります。
そしてカルシウムチャネルが開きます。
カルシウムイオン(Ca2+)も細胞外が多いので、
細胞の中にプラスイオンが流れ込んできます。
でも、ナトリウムイオンほどの濃度差はないので、
カルシウムチャネルの傾きはなだらかです。
細胞の中はまだプラスに傾いています。
やがて、細胞内外のカルシウイオン濃度差がなくなります。
濃度差がないと、チャネルは開いていても滑ることができません。
あとはずっと開いているカリウムチャネルのせいで、
細胞内はそのうちマイナスの初期状態に戻ります。
この「マイナス→プラス→マイナス」の動きが
膜電位の動きです。
心筋の話にするなら、
「心筋細胞は普段はマイナスの電気を帯びているけど、
電気刺激を受け取るとプラスに傾く。
これによって周囲の細胞に電気を伝えた後、
普通の状態に戻る」ことになります。
【今回の内容が関係するところ】(以下20220831更新)