11 精神のおはなし(3)3大欲求障害、時期・段階に特徴的な障害(3)
D 睡眠時随伴症
睡眠に関連した「困った!」が睡眠時随伴症。
突然起き上がって動き始めてしまう夢遊病や、
激しく絶叫・号泣を始める夜驚症などが当てはまります。
どちらも8歳以下の男児に多く見られますが、
夢遊病は成人で発症することもあります。
夢を見るレム睡眠ではなく、
とても深い睡眠(N3:ノンレム3、除波睡眠)時に出る
δ(デルタ)波が特徴です。
どちらも原因は不明。
だから、治療の基本はストレス管理になります。
どちらも症状出現中のことは覚えておらず、
夜驚症から夢遊状態に移行することもあります。
夢遊中の転倒には注意ですから、
周囲環境に配慮してくださいね。
(2)食欲障害
基本欲求の2つ目、食欲の障害。
「神経性やせ症(神経性食思不振症)」と
「神経性大食症」についておはなしします。
神経性やせ症は、種々の社会的要因を経て、
摂食、無茶食い、自己誘発嘔吐、
下剤乱用といった食行動異常をきたし、
体の内外に多大な影響を与える疾患です。
食行動異常の結果、
低体重(標準体重の85%以下)や無月経が起こります。
思考の基本に肥満恐怖やボディイメージの障害があって、
自己評価に対して体重や体形が著しく影響しています。
そのために、過剰な運動をしがちですね。
摂取する栄養物不足で、
骨量は低下し、徐脈や低血圧も起こってきます。
脱毛が起こるのはタンパク質不足によるもの。
産毛(うぶ毛)が濃くなるのは、
脂質不足等により
ホルモンバランスが崩れることによるものとされています。
きっかけになる社会的要因は1つではありません。
少なくとも現在では、文化・社会的要因、
心理的要因、生物学的要因が相互・複雑に関連し合う
「多元的モデル」がとられています。
残念ながら、治療方法に確立されたものはありません。
重度では生命の危険がありますので、
入院して強制的に栄養を体内に入れる必要があります。
一般的女性の場合、
体重が30kgを下回ると経鼻栄養や中心静脈栄養(IVH)対象です。
このときに注意が必要なのが「再栄養症候群」。
低リン血症を起こして不整脈、せん妄を起こして、
突然死の危険があります。
これは低栄養のためにATP産生の主軸が脂質だったところに、
栄養(炭水化物:糖質)が入ってきたため、
インシュリンの産生・分泌が増加することがきっかけ。
細胞内に糖質を取り込むだけでなく、
インシュリンは肝臓等に各種代謝促進を働きかけます。
このときにミネラルが必要になるため、
リンはじめ各種ミネラルが細胞内に取り込まれます。
…血液中にあったミネラルが、
一気に血液の外(細胞内)に行ってしまいました。
リンは、細胞内への情報伝達に必要な
セカンドメッセンジャー活性化役であり、
酸素を使う代謝でも、
腎臓で酸塩基平衡を保つためにも必要です。
必要なものが足りなくなり、
心筋も脳細胞もうまく働けない…
これが、低リン血症で起こる「再栄養症候群」です。
血液中のリン濃度を確認しつつ、
1日800~1200kcalから
栄養提供を始める必要があるのはこのためです。