12 末梢神経のおはなし(2)聴覚・触覚と皮膚(前半)(5)
(2)蕁麻疹、薬疹
一般的によく目にする
皮膚の「おかしい!」がじんま疹(蕁麻疹)。
かゆみを伴う紅斑と
膨疹(限局性の皮膚のふくらみ)が、
一過性に出没する疾患です。
「かゆい!見たら赤くなってる!
ぷくっとしてる!」ですね。
見た目は「虫刺され」と同じです。
原因は、いろいろあります。
抗原抗体反応のⅠ型(即時型)や、
物理的刺激、ストレス、疲労や感染でも起こります。
皮膚の肥満細胞が急に分泌顆粒を吐き出し、
ヒスタミン等が皮膚の中に出てきます。
ヒスタミン等の働きによって、血管が拡張すると紅斑。
血漿成分が血管外にしみ出すと膨疹。
感覚神経が刺激されるとかゆみ(掻痒感)ですね。
Ⅰ型過敏症(アレルギー)のときには、
アナフィラキシーショックに警戒!
「気道確保と血圧上昇が必要で
ノルアドレナリン筋肉注射!」すぐに思い出せましたか?
原因が分かるなら、
対象になるものを避けてくださいね。
原因不明なら、抗ヒスタミン剤
(ヒスタミンH₁受容体拮抗薬)の内服になります。
もちろん、疲労・ストレス・感染も
できるだけ避けてくださいね。
多くは過敏症(アレルギー)に
関連して起こってくるのが薬疹。
薬剤の全身投与で誘発された、
発疹・粘膜疹の総称です。
原因の多くは、抗原抗体反応から生じる
サイトカインから生じるもの。
サイトカインは、白血球たちが
仲間を呼ぶときに出るものでしたね。
薬疹で皮膚がどのような「変!」になるかについては、
決まったものはありません。
一番多いのは「播種状紅斑丘疹型」。
播種なので、種をまいたように。
紅斑なので、赤くなる。
丘疹なので、丘のように出っ張っている、です。
抗生剤や鎮痛解熱剤を飲んだ1~2週間後に出る、
全身左右対称性の粟粒~小豆大の小型紅斑・丘疹が
「播種状紅斑丘疹型」です。
ここで気付かないと重症化していきますので、
清拭等ケアのときに必ずここで気付いてください。
重症化してしまったタイプの中には、
命を危険にさらすものもあります。
表皮が壊死してしまい、
こすると剥がれ落ちる(ニコルスキー現象)を示す、
中毒性表皮壊死症型。
眼や口唇粘膜が壊死してしまう
スチーブンス・ジョンソン症候群型がこれにあたります。
薬疹の基本は、とにかく薬をストップすること。
でも、薬を飲んでいた以上、
どこかで何かの「変!」があったはず。
そこの薬を止めたうえ、
薬疹を治そうと抗アレルギー薬内服や
ステロイド剤外用を加えると、
治療中の病気の悪化・再燃や
更なる感染症の危機が生じます。
とても重篤な状態になる可能性がありますので、
集中治療室で全身管理をしつつ
メンタルケアも行うことが必要になってきます。
「たかが薬疹」なんて考えてはいけませんよ。