12 末梢神経のおはなし(3)触覚と皮膚(後半)(1)
1 皮膚感染症
(1)疥癬・白癬
ダニによるかゆみは「疥癬」。
主にヒゼンダニというダニで、
かゆみ、紅色丘疹、小さな固まり(結節)が
アレルギー反応として出てきます。
ヒゼンダニは表皮の角質に穴(トンネル)を作り、
そこに生息しています。
高齢者に多く、
長時間の肌の接触や寝具・こたつの共用等で感染。
しかも角化型疥癬では、
落屑に接触しただけで感染します。
そのため家族や介護者への感染拡大が問題になるのです。
何はなくとも駆虫剤でダニ退治からスタート。
角化型では外用薬も併用になります。
ダニが体からいなくなったら、ステロイド軟膏の出番です。
ちゃんと体から追い出した後に
ステロイド軟膏使用を始めないと、
角化型に進行する危険があります。
潜伏期間が1か月ありますので、
その点も注意が必要です。
駆虫剤は妊婦・授乳中・妊娠している可能性があるときには
使えないことも、覚えておいてくださいね。
真菌感染症の原因といえば、
白癬菌に代表される皮膚糸状菌。
足だと「水虫」、体なら「たむし」、
股間部なら「いんきんたむし」、
頭部なら「しらくも」と呼ばれてきたものは、
全部白癬菌が原因です。
かゆみが出れば「もしや」と気付けますが、
かゆみが出ないと気付かれずに
慢性化していることもあります。
しかも家族の間で感染が拡大しやすいです。
本来白癬菌は表皮についても
生着しない(感染しない)ものです。
でも湿度が高いと、
細胞の間に菌糸を入り込ませることが可能になります。
これが生着(感染)です。
「水虫」でお風呂マットやバスタオルの共用が
危険なのはこのためです。
基本は、経口と外用の真菌剤。
適切な治療を継続しないと、
家族を危険にさらします。
自覚症状が治まっても、
ちゃんと薬を続けてくださいね。
(2)細菌性皮膚感染症
続いて細菌性皮膚感染症。
「~膿皮症」とあったら、
「ああ、細菌で皮膚が変になったんだ」と思ってください。
多くは皮膚表面にいる常在菌が原因です。
毛穴周囲から感染が始まることが多く、
毛穴のうち表皮に開いている部分
(毛包漏斗部)の感染が「毛包炎」。
1つの毛穴の毛包炎なら、
基本的に放っておいても大丈夫です。
毛包とその周囲(皮下組織にも及ぶ)の炎症で、
膿瘍をつくったら「癤(せつ)」。
「おでき」のことで、熱感と痛みが出ている状態です。
1つの毛穴だけではなく、隣接する複数の毛穴に
化膿が生じていたら「癰(よう)」です。
普段出てこない言葉なので
面食らってしまうかもしれませんが。
「膿が出た」「毛穴は1つか複数か」の
区別に使われることもありますので、
何かのときには思い出してください。
いずれも抗菌剤を使用して、
皮膚を清潔に保って治していくことになります。