2 脈拍・血圧のおはなし(1)心臓3:心電図異常(2)
近道とは逆に、
正規ルートが伝わらなくなってしまったものが房室ブロック。
心房の収縮まではうまくいきますが、
それに合った心室の収縮が起こりません。
軽度から中度(Ⅰ型、Ⅱ型ウェーバー型)なら、
「ん?少し伝達遅れてる?」くらいで済みます。
正常な人でも夜間副交感神経系優位の夜間に起こりうるぐらいの、
わずかな遅れです。
中度から重度(Ⅱ型モビット2型、Ⅲ型)だと、
P波とQRSが別の動きになってしまいます。
心室にあまり血液がないのに収縮したのでは、
無駄ですし、全身にうまく血液を送れませんね。
心室に対してちょうどいいタイミングの収縮命令を送るための、
ペースメーカーが必要になりそうです。
たまたま心房と心室がちょうどいいタイミングで収縮すると、
そのときだけ心拍出量が正常に戻り、
大きな心音(キャノンサウンド)が聞こえます。
電気刺激を作る出発地点が変になると、洞機能不全。
洞不全症候群はその中でも重症です。
虚血等により洞房結節からの電気発生が1分間に50回を切ってしまいます。
…電気が出ませんから、P波がありませんね。
P波がないと、QRSの収縮命令も届きません。
つまり、心室に対する収縮命令が規則正しく届きませんから…
血液を十分に全身に送れなくなってしまいます。
めまい、ふらつき、動悸が出て…
ひどくなると失神や錯乱状態に陥ります。
ペースメーカーを入れて、
規則正しい電気刺激を出してもらう必要がありそうです。
同じくP波が出ないものに心房細動があります。
P波のような分かりやすい波が出ず、
基準になる線がプルプル震えるf波が出ています。
実は、これが一番出会う確率の高い異常心電図です。
正しくP波ができていれば、120~130回/分くらいの心拍になります。
少し早めですが…
血液はちゃんと全身に送れるくらいの拍動ですから、
「即生命危険!」という心電図ではありません。
大事なのは、基礎になる心疾患に対する理解と、
「甲状腺機能亢進症でも出うる!」ということです。
甲状腺は代謝の現場監督で、心拍数に影響を及ぼす
トリヨードチロニン(T3)やチロキシン(T4)が出ていましたね。
あと、心房が「細動(プルプル)」ですから、
塞栓予防のワーファリン、アスピリンも必要そうですね。
心房細動に似た言葉に「心房粗動」があります。
心房の収縮だけをみれば、
300回/分という猛スピードで動いています。
心電図の基準線は、P波の多すぎでのこぎり型になってしまい、
平らなところがありません。
心室には2回に1回のペースで電気が伝わり、
脈としては150回/分くらいになります。
これでも、十分頻脈ですね。