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6 体温のおはなし(3)上部消化器系(+肝胆膵)(17)

胃・十二指腸潰瘍とは、

粘膜下層に及ぶ深い上皮の欠損状態が生じてしまったこと。

胃潰瘍の7割、

十二指腸潰瘍の9割がピロリ菌のせいと考えられています。

あとはNSAIDsに代表される薬や、

クローン病によるもの等があります。

クローン病については、

下部消化器系のところでおはなししますね。

 

症状としては、胃で起こると

「心窩部から上腹部にかけての

繰り返す鈍痛や圧痛」が典型とされています。

痛みなく、いきなり吐血や下血することもありまよ。

吐血は「コーヒー残渣色」とされますね。

これは血液中のヘモグロビンが胃酸で黒色化したせいです。

下血は「タール便」。

これも黒くなる理由は同じですよ。

 

十二指腸潰瘍は、

腸に穴が開いてしまう(穿孔)と、腹膜炎の危険ですね。

吐血・下血があったら、手術の必要性が出てきます。

あとはピロリ菌を除菌して、

薬もうまく使いつつ、体を休めてあげましょう。

タバコはやめて、刺激物もやめて。

消化の良い食べ物を食べつつ、

できるだけストレスのない生活を心がけてください。

 

5、小腸

小腸は栄養を吸収するところ。

ここまでしっかり消化器系が働いてくれれば、

栄養は吸収できる大きさになっているはずです。

でも、栄養が小腸上皮に届かないと「吸収」できませんね。

「届かない!」の一因、腸閉塞(イレウス)のおはなしです。

 

その名の通り、

腸が閉塞してしまったものが「腸閉塞(イレウス)」。

物理的に詰まった「機械性腸閉塞」と、

動きが悪くて内容物が前に進まなくなってしまった

「機能性腸閉塞」に分けられます。

機械性腸閉塞はさらに

腸への血流が障害されてしまった「絞扼性腸閉塞」と、

血流は問題ない「単純性腸閉塞」に分けられます。

腸が重なり合った腸重積、ねじれてしまった腸軸捻転、

ヘルニア嵌頓が絞扼性腸閉塞の例。

鼠径ヘルニアで出てきた「嵌頓」ですね。

絞扼性腸閉塞は腸の生死がかかっていますので、

緊急手術になります。

単純性腸閉塞は、

異物や腸管外圧迫、腫瘍や炎症等で起こります。

手術後の癒着で起こることもありますね。

 

機能性腸閉塞もさらに腸管運動が低下した

「麻痺性腸閉塞」と、

腸管の運動が激しすぎた「痙攣性腸閉塞」に分けられます。

麻痺性腸閉塞は急性虚血性病変や腹膜炎で、

痙攣性腸閉塞は中毒(鉛中毒等)や

ヒステリー等の精神的要素で起こることもあります。

 

機械性単純性腸閉塞と機能性の双方は、

たまってしまったものをチューブ

(吸引チューブ:イレウス管)で吸い出し、絶飲食。

1週間くらいで、元に戻るはずです。

でも、繰り返すのならば手術の対象になってきます。

「これ!」という症状がないので

気付きにくいかもしれませんが…。

繰り返す嘔吐、腹痛、腹部膨満感、排便停止があったら、

レントゲンを撮ってもらいましょう。

ニボー像(腸管内のガスと

腸管内容物の境界が水平になること)が出たら、

イレウスの可能性が高いですね。

 

あと、機能性麻痺性腸閉塞では、

抗コリン薬は禁忌ですからね。

消化器系の運動は、

副交感神経系がコントロールしています。

副交感神経系の神経伝達物質はアセチルコリン。

そこを邪魔してしまっては、

動かなくて困っているものが

「完全停止!」になってしまいますよ。