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11 精神のおはなし(1)せん妄、認知症、うつ病(3)

薬のおはなし、一段落。

アルツハイマー型認知症におはなしを戻しますよ。

 

薬でも一時改善や現状維持しかできない以上、

まだ理解力のあるうちに、本人や家族に情報を提供し、

自己決定をしておく必要があるのです。

軽度認知症状が出たら、

タイミングを逃さずに話し合いの場を持ってほしいですね。

後期に出現する人格変化等に対しては、

早くからデイサービスや趣味の会等で

社会とのかかわりを持つことで、

孤立を防止することができます。

ヒトは社会の中で関連性と役目をもって生きていく…

これ、基礎看護等で勉強するはずです。

 

B 脳血管性認知症

脳血管性の認知症については、

ある程度中枢のところでおはなし済みです。

特徴は「(大脳や小脳等の)脳梗塞・壊死」。

血流を失い、脳実質(脳の神経細胞等)に障害が起きたもので、

認知症の約2~4割を占めます。

神経症状としては構音障害、歩行障害、片麻痺や尿失禁など。

精神症状には思考緩慢化をはじめ多様なものがあり、

情動・人格変化とされる抑うつ状態、易刺激性、

多幸、周囲への関心低下、

自発性・意欲低下(アパシー)などが含まれます。

基礎にあるものは血管の「変!」ですから、そこの治療ですね。

精神症状に対しては気分安定剤が使われることもありますが、

あくまで最小限度にとどめることが多いですよ。

 

C レビー小体型認知症

レビー小体型は、男性に多い認知症。

レビー小体というものが大脳皮質や脳幹部にたまり、

神経細胞が抜け落ちていってしまうものです。

レビー小体とは、

神経細胞に出来る変なたんぱく質からできた円柱状のもの。

これができると、神経細胞が変になっていってしまいます。

 

レビー小体型の特徴は「幻視」。

見えないはずのもの(ないはずのもの)が見えてしまうことですね。

子供がそこにいる、ヘビが入り込んできた等の

具体的な幻視が反復・継続します。

他の精神症状として、

幻覚(これは聴覚や触覚も)、抑うつ気分も出てきます。

自律神経症状として体温調節障害や

便秘・尿失禁、起立性低血圧も見られます。

脳幹部は「黒質」と呼ばれる部分にレビー小体がたまることが多く、

そのために出てくる症状がパーキソニズム。

無動や筋強剛、歩行障害や

姿勢保持反射障害等が出てきます。

中枢のところでおはなしした「パーキンソン病」との違いは、

振戦が目立たないことですね。

レビー小体型でも認知機能は低下しますが、

日によって(時間によっても)変動し、

初期には出てこないこともありますよ。

睡眠行動障害も見られるので、受診して診断が付くまでは

「認知症」ではなく

他の精神疾患と間違われてしまうこともあります。

「認知症」に対しては、

コリンエステラーゼ阻害薬が抗認知症薬として用いられます。

特徴的な幻視等の精神症状に対しては、

非薬物療法がとられますね。