7 体温のおはなし(4)内分泌系(代謝異常)(17)
(2)タンパク質レベルの代謝異常
タンパク質代謝異常は、
骨格筋で起こるものと
血清総タンパク質で起こるものに分けられます。
骨格筋のタンパク質(筋量)が減るものが、サルコペニア。
正常な加齢でも起きますが、
臓器不全や低栄養でも起こります。
悪液質(カヘキシア)というのは、
何らかの疾患を原因とした栄養失調で衰弱した状態。
白血病や悪性腫瘍で起こります。
血清総タンパク質の上昇は、
脱水や多発性骨髄腫で起こります。
多発性骨髄腫は、血球異常のところで
「ベンス・ジョーンズタンパク」の名前と共に
おはなししましたね。
この特殊なタンパク質がたくさん作られるせいで、
血清中のタンパク質量が上昇するのです。
血清総タンパク質が減る原因は、
低栄養、ネフローゼ、肝硬変。
ネフローゼは腎臓がおかしくなって、
血液中のタンパク質が尿に抜けてしまったから。
肝硬変は必要なタンパク質を
合成することができなくなったから。
「低栄養なんて、
難民や紛争地帯、飢餓のときの話でしょ?」
なんて思ってはいけません。
近日、「高齢者のタンパクエネルギー低栄養(PEM)」と
「慢性疾患による低栄養」が注目されています。
摂取総カロリー量には注意しても、
タンパク質供給が不十分だった結果です。
高齢者は生理学的に
全身タンパク量が低下しやすくなっています。
ここに摂取タンパク質量まで減ってしまうと、
咀嚼をはじめとした消化・吸収機能障害や、
五感の低下、認知にも悪影響が出てしまいます。
経口可能なら、ぜひタンパク質を増やしてください。
それがだめなら経腸栄養の内容再検討、
それでもだめなら静脈ラインからの供給も検討です。
一足飛ばしに
「とにかく静脈ラインに入れちゃえ!」ではダメですよ。
消化管はじめ、筋肉は使わないと衰えてしまいますからね。
慢性疾患性低栄養の原因には、
「筋肉が頑張っているから」と
「摂食障害を含む消化吸収障害」がありますね。
例えば、心疾患は心筋がおかしくなりつつも頑張っているせいで、
ATPの必要性(消費量)が増えますね。
同様に呼吸のところで出てくる
慢性閉塞性肺疾患(COPD)でも、
普段使わぬ呼吸補助筋まで使う努力呼吸のせいで
ATP必要性(消費量)が増えてきます。
慢性閉塞性肺疾患では
呼吸困難性の食欲低下も起こりますから、
「摂食障害」としての側面もありますね。
「摂食障害を含む消化吸収障害」としては、
消化器系疾患はイメージしやすいですね。
他にも抑うつと嚥下障害が重なりやすい脳卒中、
食欲不振と消化吸収障害の重なる肝疾患、
食欲低下と代謝性アシドーシスが重なる
腎疾患でも起こりえますよ。