9 呼吸器系のおはなし(1)通り道と赤血球(10)
C 再生不良性貧血
再生不良性貧血は、
末梢血の血球が全て減る(汎血球減少)ことと、
骨髄の低形成が特徴です。
成人で発生するときには、
「造血細胞そのものの異常」よりも、
後天性に生じた
「特発性(大多数は免疫異常)」が多いですね。
薬物や妊娠等の他の原因があるものは「二次性」ですよ。
一般的な貧血症状と、粘膜出血が見られます。
全ての血球が足りないのですから、
体温1:血液免疫1
(「白血球が足りない!」)の話でもありますね。
軽症なら、タンパク同化ステロイド薬による薬物療法。
貧血が強いなら安静にしつつ、
外傷(感染)に注意してくださいね。
重症化してしまったら、
特発性なら免疫抑制剤の適用になります。
でも、可能なら骨髄移植をしてほしいところですね。
D 溶血性貧血
溶血性貧血は、
溶血によって赤血球寿命が短くなったために、
骨髄での赤血球産生が追い付かない状態です。
「溶血」というのは、
何らかの原因で赤血球の膜が破壊されてしまい、
中に入っているヘモグロビンが外に出てしまうこと。
急性溶血性貧血は「赤血球のせい」と
「それ以外のせい」に分けられます。
「赤血球のせい」は、
「赤血球の膜が弱すぎる!」など先天性原因が多いですね。
ここで覚えてほしいのがサラセミア。
ヘモグロビンを構成する
グロビンタンパクの合成異常を起こす遺伝性疾患です。
溶血性貧血(かつ小球性低色素性貧血)のもとですね。
地域によって発症タイプに差があり、
日本人で発症するのは小球性貧血しか出てこない
軽症型が大多数。
だから日本では病名が分かっても
治療不要なものが大半です。
ただし、病気本来の姿としては
溶血性貧血を示すことを忘れないでくださいね。
「それ以外のせい」の多くは後天性。
約6割は、免疫系が変になったせいで起こる
免疫性溶血性貧血です。
後天性の溶血性貧血としては
赤血球破砕症候群もありますね。
赤血球破砕症候群というのは、
赤血球が血管内で物理的に砕かれてしまい、
そのせいで貧血が起こるもの。
心臓や大血管の異常で生じる乱流によるものや、
マラソン時の足底の血管のように
長期的な物理的刺激によっておこるもの
(「行軍症候群」)もあります。
赤血球のせいで溶血になるなら、
葉酸の補充と一緒に
脾臓の摘出(摘脾)もされることがあります。
溶血が、主に脾臓で行われているせいです。
摘脾は急性溶血性貧血でよく効きますが、
その後免疫不全を起こすこともあるので
注意していてくださいね。
それ以外のせいで起きた溶血なら、
多くは免疫性でしたから、
副腎皮質ステロイドの薬物療法がとられます。
赤血球破砕症候群では、
原因への対処が一番の貧血治療ですね。
慢性の溶血性貧血は、
貧血よりも黄疸で気付かれることが多いですね。
きっかけとして、
胆石の可能性があることは覚えておいてください。