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2 呼吸器系のおはなし(11)

2022年8月22日

酸素不足状態を知ることができる

パルスオキシメーターについて前回おはなししました。

今回は酸素不足状態の原因を知るときに役立つ

「スパイログラム」を説明しましょう。

 

スパイログラムというのは、

スパイロメーターという器具を使ったグラフです。

多くの用語が出てくるので、

大事なところだけを最初に理解しましょうね。

 

スパイログラムは何を記録しているのかというと、

呼気と吸気の量を記録したもの。

上に行くと空気を吸った量、

下に行くと吐いた量を示しています。

途中で検査担当の人に

「はい、ここから大きく息を吸ってー」と言われます。

するとグラフが大きく上へと向かいます。

「限界まで吸ったら、限界まで吐いてー」と言われると、

今度はグラフが下へと向かいますね。

「限界まで吐いたらー、普通の呼吸ー」と言われて、

普通の「スー、ハー」に戻ります。

この限界まで吸ったときと

限界まで吐いたときの最大値が、肺活量です。

「努力肺活量」と呼ぶこともありますね。

約2000~4000㎖(約2~4ℓ)と個人差がありますよ。

 

でも、吐ききった後でも肺の中には空気が残っています。

これが残気量で、約2500㎖あります。

肺胞がぺちゃんこにならないように、

膨らみやすい状態を維持するために必要な「残り」ですよ。

普通の「スー、ハー」は1回換気量と呼びます。

 

あと、覚えておきたいのが「1秒量」という言葉です。

これは限界まで吸った後、限界まで吐くときに

「できるだけ勢い良く吐き出してー!」と言われて、

勢いよく吐いた呼気の最初の一秒に吐き出せた空気量です。

ここまで分かると「1秒率」と「%肺活量」という言葉を

理解できるようになります。

 

1秒率は分母に努力肺活量、

分子に1秒量を置いて100をかけたもの。

「限界状態から吐き出すとき、

最初の1秒で何%を吐き出せますか」を示します。

これが低い数字(%)なら、空気の通り道が狭いということ。

細いストローではごくごく飲めないように、

細い気管・気管支では空気を勢いよく通せません。

1秒率が低い病気は「閉塞性障害」と呼ばれますよ。

気管支ぜんそくや慢性閉塞性肺疾患(COPD)が

代表例ですね。

 

%肺活量は年齢・性・体格等から計算した

予測肺活量を分母、

実際に測った実測肺活量(=努力肺活量)を

分子に100をかけたもの。

「あなたなら、これぐらい肺活量がありそうですけど、

どうですか?」を示します。

これが低い数字(%)なら、

肺胞が思ったよりも膨らめていないということ。

ゴム風船がゴムの劣化でうまく膨らめていない状態です。

肺胞が拘束されているように

うまく膨らめていない…ということで

%肺活量が低い病気は「拘束性障害」と呼ばれます。

こちらには気胸や胸水、間質性肺炎が含まれますよ。

 

スパイログラムについては、

他の科目(多分病理学)の勉強が進むと出てくるはずです。

国家試験でも「閉塞性障害」

「拘束性(換気)障害」という言葉は出てきます。

何を基準にして、何を見ているのか。

早めにイメージできるようにしておくと、

あとの勉強が楽になりますよ!

 

【今回の内容が関係するところ】(以下20220822更新)